この記事の執筆者
フォーゲル綜合法律事務所
共同代表弁護士
嵩原 安三郎
たけはら やすさぶろう
退職・労働問題を中心に、企業と個人の双方における法的問題解決に従事。
退職代行分野において日本有数の実績を持つ。
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弁護士の嵩原安三郎です。弁護士として25年、退職代行では2万人超の相談に向き合ってきました。
退職代行の相談で、料金の次によく聞かれるのが有給休暇と退職金のことです。
「有給が20日残っているんですが、退職代行を使ったら消えてしまいますか?」
「会社に、勝手に辞めるやつに退職金は出さないと言われました。」
辞めると決めたのに、お金の話で足が止まる。損をしたくない気持ちと、もう会社と話したくない気持ちがぶつかる場面です。迷って当然の場面だと思います。
有給休暇を何十日も残したまま、会社と話すのが怖くて黙って辞めていく。そういう人の話を聞くたびに、私はもどかしくなります。
先に結論を書きます。退職代行を使っても、残っている有給休暇は退職日までに使えます。会社の許可は要りません。退職金は、会社に規程があれば、辞め方に関係なく請求できます。
ただ、会社が「認めない」と言ってきたときは、話が変わります。そこから先は、誰に頼んだかで結果が分かれます。ここでは、条文と相談の現場から、その分かれ目を書きます。
退職代行でも有給消化はできる|会社の許可は要りません
有給休暇は、働く人が「この日に休みます」と指定すれば取れる休みです。会社は、指定された日に与えなければなりません(労働基準法39条5項)。
会社の承認は要りません。最高裁も、有給休暇の取得に使用者の承認は必要ではない、と判断しています。厚生労働省の解説ページが、この判決を紹介しています。
年次有給休暇|しっかり学ぼう!働くときの基礎知識|確かめよう労働条件: 厚生労働省
職場の申請書に「承認」の欄があることは多いです。ただ、あの欄は許可ではありません。上司が見ました、という印にすぎません。私は動画でもそう話しました。
【退職代行 弁護士】「有給休暇」について会社がよく言う嘘!11選!!: 弁護士タケハラ退職代行ちゃんねる
自分の有給が何日あるか確かめる
有給休暇は、入社して6か月続けて働き、決められた出勤日の8割以上に出ていれば付きます。会社の大きさは関係ありません。社員が一人だけの会社でも同じです。
日数は、勤めた期間で決まります。週5日働く人なら、次のとおりです。
| 勤めた期間 | 6か月 | 1年6か月 | 2年6か月 | 3年6か月 | 4年6か月 | 5年6か月 | 6年6か月以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 有給休暇の日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
出典: 厚生労働省のQ&Aページ(週5日以上または週30時間以上働く人の日数。末尾の参考資料にリンク)
パートやアルバイトで出勤日が少ない人も、日数は減りますが有給休暇は付きます(労働基準法39条3項)。使わなかった分は、次の1年に繰り越せます。時効は2年です(労働基準法115条)。
残りの日数は、給与明細に書いてあることが多いです。書いていなければ、入社日と働いた年数から上の表で見当をつけてください。
有給10日で、出勤せずに2週間が過ぎる
期間の定めのない雇用なら、辞めると申し入れてから2週間で雇用は終わります(民法627条1項)。土日が休みの会社なら、2週間のうち出勤日は10日です。
つまり、有給休暇が10日残っていれば、退職の連絡をした日から一度も出勤せずに退職日を迎えられます。20日残っていれば、退職日を少し先にして、全部使い切ってから辞めることもできます。
相談でこの計算をお伝えすると、こう返ってくることがあります。
「え、そんなに休んでいいんですか?」
いいんです。それは会社からのご褒美ではなく、これまで働いてきた分の権利です。
- 休む日は働く人が指定する。会社の許可は要らない(労働基準法39条5項)
- 6か月勤めて出勤日の8割以上に出れば付く。パート・アルバイトも同じ
- 使わなかった分は翌年に繰り越せる。時効は2年
- 有給10日で、退職の連絡から2週間、出勤せずに過ごせる
会社が有給消化を断るときによくある言い分と、その答え
退職代行で有給休暇を使いたいと伝えると、会社から断る返事が来ることがあります。言い分は、だいたい決まっています。
「辞めるなら、有給は使わせない」
一番多いのがこれです。
「辞める人間に有給を使わせる義理はない。」
そう言われて怖くなり、有給の話を引っ込めてしまう方がいます。けれども、これは通りません。辞める予定があっても、退職日までは有給休暇を使えます。就業規則に「退職前の有給は認めない」と書いてあっても、その定めは効力を持ちません。
「引継ぎが終わるまで、有給は認めない」
引継ぎを持ち出されることも多いです。
「引継ぎもしないで休むなんて、許されると思っているのか。」
引継ぎは、やり方を一から教えることではありません。自分が抱えている仕事と、ほかの人が知らない手続きをメモにまとめて渡せば、最低限の引継ぎになります。有給休暇に入る前にメモを渡せば、引継ぎを理由に休みを止める話ではなくなります。
「うちには有給はない」「人手が足りないから無理」
小さな会社でよく聞く言い分です。有給休暇は会社の大きさに関係なく付きます。厚生労働省のリーフレットも、単に「業務多忙だから」という理由では時季変更権は認められない、と書いています。
「年次有給休暇」の付与日数は、法律で決まっています(リーフレットシリーズ労基法39条): 厚生労働省
人が足りないのは、辞める人のせいではありません。人を雇えていない会社の問題です。
「有給を使った分、最後の給料を減らす」
有給休暇を取ったことを理由に、給料を減らしたり不利な扱いをしたりしてはならない、と法律に書かれています(労働基準法附則136条)。有給の日にも、決められた計算で給料が払われます。
有給休暇に関する会社の言い分は、動画で2回に分けて取り上げました。
【退職代行 弁護士】第2弾!「有給休暇」についての会社の嘘!追加の8選+2つ!: 弁護士タケハラ退職代行ちゃんねる
自分で伝えるなら、言い方を変える
退職代行を使わず、自分で有給休暇のことを伝える方もいます。そのときは、言い方で損をしないでください。
❌「辞めるので、有給は全部使わせてもらいます。文句はないですよね。」
✅「退職日は○月○日を希望します。それまでの出勤日には、残っている年次有給休暇○日を充てます。」
変えたのは、相手に「文句はないですよね」と問いかけるのをやめたことです。問いかけると、相手は反論を始めます。日付と日数だけを伝えれば、言い返す材料を最初から渡さずに済みます。

嵩原 安三郎
前日までに伝えれば足りるのが原則で、小さな会社で数日前までなら認められることがある、という程度です。急に体調を崩して休む場合は、あとから有給に振り替えてもらえることもあります。
退職代行で退職金はもらえる?規程があれば辞め方は関係ありません
退職金は、給料と違って、法律で必ず払うと決まっているものではありません。払うかどうかは会社が決めます。だからこそ、自分の会社がどう決めているかを先に確かめます。
私は動画で、退職金が出るパターンを4つに分けて話しました。
| 退職金が出るパターン | どこで確かめるか | 請求の見通し |
|---|---|---|
| ① 会社に退職金の規程がある | 就業規則・退職金規程 | 規程の条件を満たせば請求できる |
| ② 中退共などの共済に入っている | 給与明細 | 共済から支払われる。会社が拒むことは少ない |
| ③ 規程はないが、辞めた人みんなに払ってきた | 辞めた同僚の話 | 請求できることもあるが、証明のハードルが高い |
| ④ 社長の気持ちで出すことがある | 書面はないことが多い | 請求の根拠にはならない |
出典: 弁護士タケハラ退職代行ちゃんねるの動画(表の下に引用)をもとに作成
【退職代行 弁護士】退職代行を使用してても退職金は請求できますか?: 弁護士タケハラ退職代行ちゃんねる
規程の条件を満たしていれば、請求できる
退職金の定めを置く会社は、誰に、いくら、いつ払うかを就業規則に書かなければなりません(労働基準法89条3号の2)。そして就業規則は、働く人がいつでも見られるようにしておく義務があります(労働基準法106条)。
規程は、会社と働く人の約束です。「3年以上勤めた人に払う」と書いてあれば、3年勤めた人には払う約束をしています。辞め方が気に入らないというだけで払わないのは、約束にない話です。
ただ、規程の条件そのものを満たしていなければ、請求はできません。勤続年数が足りない場合や、懲戒解雇なら払わないと規程に書かれている場合です。ここは、規程の文面を一行ずつ読んで確かめます。
会社がごねるのは、規程がある会社の一部
動画でも話しましたが、退職金の規程がある会社でも、10件に1件か2件は支払いを渋ります。
「退職代行なんか使うやつに、払う退職金はない。」
規程の条件を満たしているのに、こう言われることがあります。腹が立っているのだろうと思います。ここからは交渉になります。
動画で紹介した例があります。規程に「引継ぎをきちんとしたら退職金を払う」と書いてある会社でした。事前にそれが分かっていたので、細かい引継ぎ書を作り、私たちを通じて会社に送りました。会社も引継ぎ書があることは認め、多少の交渉のうえで支払うことになりました。
退職金の請求には期限があります。退職手当の請求権は、5年で時効にかかります(労働基準法115条・附則143条3項)。

嵩原 安三郎
一方で、規程があるのに「出ない」と言われたまま請求をあきらめる人もいます。それを聞くと、本当に残念に思います。
有給消化と退職金の交渉は、誰に頼むかで結果が変わります
退職代行には、大きく分けて民間の業者、労働組合、弁護士の3つの形があります。会社が素直に有給休暇を認め、退職金を払ってくれるなら、違いは表に出ません。違いが出るのは、会社が「認めない」と言ってきたときです。
民間の業者ができるのは、本人の希望を会社に伝えるところまでです。会社が断ったあとに、日数や支払いについて話し合いを続けることは、本人に代わって法律の問題を扱うことになります。弁護士でない人がお金をもらってそれをすることは、弁護士法72条で禁じられています(弁護士法72条)。
ここで、話が止まります。業者からは、こう言われることがあります。
「会社が認めないと言っているので、ここから先は私たちでは動けません。」
非弁行為の考え方は、別の記事で詳しく書きました。
退職代行の非弁行為って何?頼んだ人も罪になる?: 退職代行コラム
労働組合の退職代行は、団体交渉として会社と話し合うことができます。ただ、会社が退職金を払わず裁判になったとき、代理人として裁判所で手続きを進められるのは弁護士です。
弁護士か、そうでないか。この二択で考えると外します。見るべきは、自分のケースで会社が「認めない」と言ってきそうかどうかです。そう言われそうなら、最初から交渉と請求ができる先に頼むほうが、頼み直しの手間がかかりません。
- 民間の業者:有給や退職金の希望を伝えるところまで
- 労働組合:団体交渉として会社と話し合える
- 弁護士:代理人として交渉し、退職金を請求し、裁判の手続きもできる

嵩原 安三郎
もっとも、弁護士に頼めば会社が必ず折れる、という話ではありません。私はそこまでは言えません。
フォーゲルで有給消化と退職金を頼むなら|プランの選び方
先に、当事務所でできないことを正直に書いておきます。有給休暇の買い取りの交渉は行っていません。残業代の金額を当事務所で計算することも、基本の料金には入っていません。
そのうえで、有給休暇と退職金の希望に合わせて、次のプランがあります。
- ライトプラン 22,000円
退職の意思と、有給休暇を使いたいという希望を会社に伝えます。引継ぎや私物の連絡は、ひな形を使ってご自身で送っていただきます。 - 円満退職スタンダード 25,000円
弁護士が代理人として、有給休暇の取得を伴う退職を会社と交渉します。この交渉に追加の費用はかかりません。 - 円満退職あんしんプラス 55,000円
スタンダードの内容に加え、退職金の請求、給与の請求、退職を理由とした損害賠償請求への対応(訴訟対応を含む)まで行います。
どのプランが合うか分からない方は、10秒で答えられるプランチェッカーで確かめてください。
退職金の請求は、円満退職あんしんプラスでお受けしています。退職金の規程をLINEかメールで送っていただければ、それをもとに会社に退職金の有無を確かめ、支払う義務があれば請求します。
出張を伴うご依頼と裁判などの手続きは、これらのプランには含まれず、別途ご相談になります。ただし、円満退職あんしんプラスなら、退職を理由とした損害賠償の裁判には追加料金なしで弁護士が対応します(交通費などの実費は別途)。
退職代行は安心確実な弁護士へ【フォーゲル綜合法律事務所】: フォーゲル綜合法律事務所

嵩原 安三郎
有給だけなのか、退職金まで求めるのかで、合うプランが変わります。最初に分かると、どこから話すかを早く決められます。
よくある質問
退職代行を使うと、残っている有給休暇は消えてしまいますか?
消えません。有給休暇は、退職日までなら使えます。退職の連絡と一緒に、残っている日数を退職日までの出勤日に充てたいと伝えれば足ります。ただ、退職日を過ぎると使えなくなるので、退職日を決める前に残りの日数を確かめてください。
有給休暇が残っていなくても、退職代行は使えますか?
使えます。期間の定めのない雇用なら、辞めると申し入れてから2週間で雇用は終わります(民法627条1項)。有給休暇がないときは、その間を欠勤として扱ってもらうよう会社と話し合うことが多いです。欠勤した日の給料は出ません。
パートやアルバイトでも、有給休暇はありますか?
あります。6か月続けて働き、決められた出勤日の8割以上に出ていれば、パートやアルバイトにも有給休暇が付きます。週の出勤日数が少ない人は、日数が少なくなります(労働基準法39条3項)。
使い切れない有給休暇を、会社に買い取ってもらえますか?
会社が買い取りに応じるかどうかは、会社の判断です。法律で決まった義務ではありません。なお、当事務所では有給休暇の買い取りの交渉は行っていません。残っている日数は、退職日までに使う形で進めます。
退職金の規程を見たことがありません。どうすればいいですか?
退職金の定めがある会社は、就業規則にその内容を書き、働く人がいつでも見られるようにしておかなければなりません(労働基準法89条・106条)。自分で確かめられないときは、退職金の有無を会社に確かめるところから弁護士に頼めます。
まとめ|退職代行でも有給消化はできる。退職金は規程を確かめてから
有給休暇も退職金も、辞め方で消えるものではありません。消えるのは、知らずにあきらめたときです。
- 退職代行を使っても、有給休暇は退職日までに使える。会社の許可は要らない
- 退職日より後に有給の日をずらすことはできない
- 「辞めるなら有給なし」「人手不足」は、断る理由にならない
- 退職金は、規程があれば条件を満たす限り請求できる。時効は5年
- 会社が「認めない」と言ってきたら、交渉と請求ができる弁護士へ
辞めると決めたあとまで、お金のことで会社とやり合うのは、本当にしんどいことです。そのしんどさに負けて、自分の権利を置いてくる人を、私はたくさん見てきました。
会社を打ち負かす必要はありません。働いた分を受け取って、すり減らさずに次へ進むための手続きです。有給休暇は、辞める人が最後に使っていい休みです。

嵩原 安三郎
参考にした法令・資料
- 労働基準法(39条・89条・106条・115条・附則136条・附則143条): e-Gov法令検索
- 民法(627条): e-Gov法令検索
- 弁護士法(72条): e-Gov法令検索
- 年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有休があると聞きましたが、本当ですか。: 厚生労働省
- 年次有給休暇|しっかり学ぼう!働くときの基礎知識|確かめよう労働条件: 厚生労働省
- 「年次有給休暇」の付与日数は、法律で決まっています(リーフレットシリーズ労基法39条): 厚生労働省
- 【退職代行 弁護士】うちの会社には有給休暇がないと言われましたが本当でしょうか?: 弁護士タケハラ退職代行ちゃんねる
この記事の執筆者
フォーゲル綜合法律事務所
共同代表弁護士
嵩原 安三郎
たけはら やすさぶろう
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嵩原 安三郎
退職日のあとに有給の日を動かすことはできないので、辞める直前の有給消化は、会社が認めるほかありません。厚生労働省の解説ページにも、そう書かれています。正直、ここを知らずに有給をあきらめた人の話を聞くと、悔しくなります。