この記事の執筆者
フォーゲル綜合法律事務所
共同代表弁護士
嵩原 安三郎
たけはら やすさぶろう
退職・労働問題を中心に、企業と個人の双方における法的問題解決に従事。
退職代行分野において日本有数の実績を持つ。
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弁護士の嵩原安三郎です。弁護士として25年、退職代行では2万人超の相談に向き合ってきました。
公務員の方からの相談は、最初の一言がだいたい決まっています。
「公務員でも、退職代行って使えるんですか?」
「上司に辞めたいと言ったら、『今は認められない』と言われました。」
役所や学校、自衛隊で働く方は、民間の会社とは別の法律で動いています。ネットで見た「2週間で辞められる」という話は、そのままは当てはまりません。
先に結論を書きます。公務員でも退職代行は使えます。ただし、頼めるのは弁護士だけです。
もう一つ、先にお伝えしたいことがあります。公務員の退職は、民間より難しいわけではありません。手続きをきちんと踏めば、思っているより静かに進むことがほとんどです。
ここでは、なぜ弁護士だけなのかを条文から確かめます。そのあとで、辞令が出るまでの流れ、自衛官の場合、懲戒処分が予定されているときの扱いを書きます。
退職代行は公務員でも使える?頼めるのは弁護士だけです
民間の会社員なら、期間の定めのない雇用は、辞めると申し入れてから2週間で終わります(民法627条1項)。民間の退職代行業者が「伝えるだけ」で済ませられるのは、この決まりがあるからです。
公務員には、この決まりがそのままは使えません。国家公務員の退職は、任命権者が法律と人事院規則に従って行うと定められています(国家公務員法61条)。地方公務員も、地方公務員法と自治体のきまりに従います。
つまり、公務員の退職は「辞めます」と伝えれば終わる話ではありません。辞めたいと申し出て、任命権者に承認してもらう手続きです。
民間の業者が公務員の退職を扱えない理由
業者のサイトには、こう書かれていることがあります。
「公務員の方の退職代行もできます。」
私はこの一文を見ると、正直、心配になります。承認してもらうには、退職日や引き継ぎ、有給休暇をどうするかを勤務先と話し合います。これは、本人に代わって法律の問題を扱うことそのものです。
弁護士でない人が、お金をもらって他人の法律の問題を扱うことは、弁護士法72条で禁じられています(弁護士法72条)。民間の業者が公務員の退職を引き受けると、この線を越えてしまいます。そうなったときに困るのは、業者ではなく頼んだ本人です。非弁行為については、別の記事で詳しく書きました。
退職代行の非弁行為って何?頼んだ人も罪になる?: 退職代行コラム
労働組合の退職代行も、公務員は使えません
労働組合が会社と団体交渉できるのは、労働組合法があるからです。ところが、一般の国家公務員と地方公務員には、労働組合法が適用されません(国家公務員法附則6条・地方公務員法58条)。
自衛隊員は、交渉のための団体をつくることも、加わることも禁じられています(自衛隊法64条)。警察職員と消防職員も同じです(地方公務員法52条5項)。
そのため、労働組合の退職代行も、公務員の退職は扱えません。公務員の方が使える退職代行は、弁護士に限られます。
- 民間の退職代行業者:扱えない(承認を求める話し合いは弁護士法72条にふれる)
- 労働組合の退職代行:扱えない(公務員には労働組合法が適用されない)
- 弁護士:扱える(代理人として任命権者と話せる)
当事務所のYouTubeでも、この点を話しました。
【退職代行 弁護士】公務員の退職代行!弁護士しか扱えない!?: 弁護士タケハラ退職代行ちゃんねる
公務員の退職は任命権者の承認で決まる|辞令が出るまでの流れ
任命権者とは、職員を採用したり辞めさせたりする権限を持つ人や機関のことです。市役所なら市長、公立学校の先生なら教育委員会、警察官なら警視総監や道府県警察本部長、消防職員なら消防長です(地方公務員法6条)。
退職代行を頼むと、弁護士はこの任命権者の側に連絡し、退職の承認と退職日の調整を求めます。流れは、おおむね次のとおりです。
- 弁護士が勤務先に電話し、代理人になったことを伝える
- 退職の希望をまとめた書面を、FAXまたはメールで送る
- 弁護士が勤務先と話し合い、退職日を決める
- 承認され、退職の辞令や書類を受け取る(郵送が多い)
許可が出ないことはある?
ここが一番気になるところだと思います。国家公務員については、人事院規則にこう書かれています。
「任命権者は、職員から書面をもって辞職の申出があったときは、特に支障のない限り、これを承認するものとする。」
人事院規則八―一二(職員の任免)第51条: e-Gov法令検索
「許可が要る」と聞くと、怖くなる方が多いと思います。ですが、許可が要ることは、許可されにくいという意味ではありません。支障がなければ承認する、が出発点です。
相談では、こう聞かれることもあります。
「弁護士に頼んでも、退職が決まらないことはあるんですか?」
実務でも、公務員の勤務先は法律から外れた動きをあまりしません。民間の社長にときどきいる、退職届を受け取らないといった対応は、ほとんど見かけません。私が担当してきた範囲では、特殊な場合を除けば、退職そのものを最後まで認めないと言われることは、まずありません。
辞めるまでの期間と、辞令の受け取り方
役所や学校にお勤めの方なら、数日から数週間で退職日を迎えることが多いです。ただ、事案によって幅があります。
もう一つよく聞かれるのが、辞令の受け取りです。
「辞令をもらいに、職場に行かないといけないんですか?」
これまでの例では、辞令や必要な書類は自宅に郵送してもらえることがほとんどです。退職のために職場へ顔を出す場面は、思っているより少なくて済みます。辞令のためだけに無理をして出勤しようとする方を見ると、もどかしく思います。

嵩原 安三郎
最高裁判所 昭和34年6月26日 第二小法廷判決(昭和33(オ)538): 裁判所
裏を返すと、辞令が出るまで退職は決まっていません。退職日が決まっても安心しきらず、辞令の日付と届き方まで確かめてください。
自衛官の退職代行は、ほかの公務員より時間がかかります(自衛隊法40条)
自衛官の方からのご依頼は、多くなってきています。相談を聞いていると、よくここまで我慢してきたと思う方が少なくありません。
上下関係が厳しく、営舎で寝起きも一緒です。仕事の時間もそれ以外の時間も、同じ人と過ごします。そこで辞めたいと上司に言っても、取り合ってもらえない。
「今は人が足りないから、辞めるのは認められない。」
私は動画で、自分なら耐えられない、3日で逃げてしまうと思う、と話しました。正直な気持ちです。
【退職代行 弁護士】突然の失踪も!?他の公務員とも違う自衛隊の退職とは: 弁護士タケハラ退職代行ちゃんねる
自衛隊法40条が定める「承認しない」場合
自衛官には、自衛隊法が適用されます。ほかの公務員と違うのは、退職を承認しなくてよい場合が、法律にわざわざ書いてあることです。
「これを承認することが自衛隊の任務の遂行に著しい支障を及ぼすと認めるときは(中略)その退職を承認しないことができる。」
上司がこの条文を盾にして、退職をなかなか認めないこともあります。ただ、条文が求めているのは「著しい支障」です。それも、自衛隊の任務を果たすために必要な最低限の期間に限られます。
私は、災害派遣のような場面を想定した条文だと考えています。人が足りないことは、ここでいう「著しい支障」ではありません。ふだんの退職でこの条文が使われる場面は、ほとんどないと見ています。
任期制の自衛官は、任用期間の中で必要な期間とされています。また、退職しないと家族を扶養できないという市町村長の証明があるときは、承認しないことはできません(自衛隊法施行令54条)。
連絡先が決まるまでが長い
自衛隊の退職では、最初にどこへ連絡すればいいのかが決まらず、部署をいくつも回されることがあります。それでも、話す相手が決まってしまえば、手続きは早く進みます。
一般の公務員なら2〜3週間で済むことが多いのに比べ、自衛官は1〜2か月かかることがあります。いじめや暴力があったときは、弁護士から勤務先にその事実をはっきり伝えます。
辞めたいと言った途端に、こう言われて怖くなり、相談に来る方もいます。
「勝手に辞めるなら、懲戒処分にするぞ。」
辞めたいと申し出ること自体は、懲戒の理由ではありません。懲戒の理由になるのは、申し出たあとに連絡を絶ってしまうことのほうです。

嵩原 安三郎
自衛隊では、官給品の整備など、辞める前に本人がしなければならないことも残ります。そこは私たちが代わりにできない部分なので、勤務先との間で段取りを決めておきます。
懲戒処分が予定されているときは、退職がすぐ認められないことがあります
公務員の退職で、話が止まりやすい場面があります。何か問題があって、懲戒処分の結論を待っているときです。
勤務先からは、こう言われることがあります。
「処分の結論が出るまで、退職の承認は待ってほしい。」
懲戒処分は、在職している職員に対して行うものです。先に退職を認めると、処分ができなくなります。承認が後回しになるのは、退職を認めたくないからではありません。処分の手続きが先に進んでいるからです。
公務員の懲戒処分の種類
懲戒処分の種類は、法律で決まっています。国家公務員・地方公務員・自衛隊員で、少しずつ違います。
出典: 国家公務員法・地方公務員法・自衛隊法(e-Gov法令検索)
「先に辞めれば退職金は守れる」とは限りません
懲戒の話が出ている方からは、こう聞かれることがあります。
「処分が出る前に辞めてしまえば、退職金はもらえますよね?」
懲戒免職になると、退職手当の全部または一部が支給されないことがあります(国家公務員退職手当法12条)。これは国家公務員の決まりですが、多くの自治体も条例で同じような定めを置いています。
では、処分の前に辞めてしまえば安心か。そうとも限りません。退職したあとでも、在職中に懲戒免職にあたる行いがあったと認められれば、まだ払われていない退職手当を支給しない処分ができます(同法14条)。
懲戒の話が出ていると、怖くて誰にも言えなくなります。それでも私がお伝えしているのは、逃げ切ろうとしないことです。何があったのかを先に弁護士に話し、処分の見通しと退職の時期を一緒に考えるほうが、結果として失うものは少なくなります。
無断欠勤は、それ自体が懲戒の理由になります
もう一つ気をつけてほしいのは、辞めると伝えたあと、連絡を絶ってしまうことです。職務を怠ったことは、懲戒処分の理由として法律に挙げられています(国家公務員法82条1項2号)。
民間の業者に「辞めます」とだけ伝えてもらい、そのまま出勤せず電話にも出ない。公務員の場合、これが一番危ない形です。勤務先がそれを正式な申し出と受け取らなければ、ただの無断欠勤として扱われかねません。
辞めたい一心で取った行動が、懲戒の理由になってしまう。私は、それが一番悔しい。

嵩原 安三郎
正直に言うと、懲戒の結論まで私が約束することはできません。ただ、一人で呼び出しに応じて、言わなくていいことまで話してしまう方を見ると、残念でなりません。
教員・警察官・市役所職員の退職代行|職種ごとに気をつけること
市役所・県庁などの役所勤め
市役所や区役所、県庁で働く方は、地方公務員法に従います。退職の意思を伝え、任命権者の承認を受けて、退職が決まります。上司からは、こう言われることがあります。
「後任が決まるまで、待ってもらえないか。」
私たちが担当してきた例では、それでも大きなもめごとなく進むのが通常です。辞令も自宅に届いて、それで退職が終わっています。
公立学校の先生
公立学校の先生も、地方公務員のきまりに従います。任命権者は教育委員会です。
先生の場合は、急に出勤しなくなると子どもたちへの影響が大きく、勤務先も慎重になります。学校からは、こう言われることもあります。
「せめて年度末までは、いてもらえませんか。」
有給休暇が残っていなければ、残りの日数は出勤を求められることもあります。体調が悪いときは、出勤を最低限にしてもらうよう、私たちから勤務先に求めます。
警察官
警察官は、地方公務員法と警察法などに従います。退職には承認が要り、退職の辞令を受け取ることになります。
これまでの依頼では、本人の退職の意思は尊重してもらえています。辞令を受け取るための出勤もせず、郵送で対応してもらうようお願いしています。
今日から出勤しないで辞められる?
有給休暇が残っていれば、出勤しないまま退職日を迎えられることがあります。体調不良で休んでいる方は、休んだまま退職することもあります。
有給休暇もなく、体調も悪くない場合は、退職日が決まるまで出勤するのが原則です。ただ、弁護士がついている間に不当な扱いがあれば、私たちから勤務先に抗議します。即日退職の考え方は、別の記事にまとめました。
退職代行なら今日から会社に行かなくていい?即日退職のしくみ: 退職代行コラム

嵩原 安三郎
その気持ちは、とても大事なものだと思います。ただ、心と体が先に壊れてしまうと、そのあと誰も得をしません。辞める時期は、弁護士と勤務先の話し合いで調整できます。
フォーゲルの公務員退職あんしんプラス|弁護士が任命権者と話します
先に、このプランでできないことを書いておきます。懲戒処分の結論や、退職日がいつになるかは、勤務先が決めることです。私たちが約束することはできません。
そのうえで、公務員・自衛隊員の方の退職は、法律上、弁護士にしかできません。当事務所では、自衛隊員や公務員の方の退職を、これまで数多く担当してきました。
退職代行は安心確実な弁護士へ【フォーゲル綜合法律事務所】: フォーゲル綜合法律事務所
- 公務員退職あんしんプラス 55,000円
国家公務員・地方公務員・自衛隊員・みなし公務員の方が対象です。弁護士が代理人として勤務先と話し合い、退職日を決めます。退職金や官舎の退去、不当な賠償請求への対応も含みます。退職日が決まるまで、勤務先からの連絡には弁護士が対応します。
民間の会社にお勤めの方や業務委託で働く方には、別のプランがあります。どれが合うかは、プランチェッカーで確かめられます。
どのプランが合うか分からない方は、10秒で答えられるプランチェッカーで確かめてください。
出張を伴うご依頼と裁判などの手続きは、このプランには含まれず、別途ご相談になります。なお、民間の会社員の方向けの円満退職あんしんプラスなら、退職を理由とした損害賠償の裁判には追加料金なしで弁護士が対応します(交通費などの実費は別途)。

嵩原 安三郎
最初に全体が分かると、どこに連絡し、何から話すかを早く決められます。
よくある質問
公務員が民間の退職代行業者を使うと、どうなりますか?
勤務先が、業者からの連絡を正式な辞職の申し出として扱わないことがあります。そのまま出勤せず連絡もつかない状態が続くと、無断欠勤として懲戒処分の理由になるおそれがあります。公務員の退職は承認を求めるやり取りになるので、代理人として話せるのは弁護士です。
公務員が退職代行で辞めるまで、どのくらいかかりますか?
私たちが担当してきた範囲では、役所や学校にお勤めの方は数日から数週間ほどで退職日を迎えることが多いです。自衛官の方は、数週間から2か月ほどかかることがあります。懲戒処分の手続きが進んでいる場合などは、これより長くなることがあります。
退職の辞令を受け取るために、出勤しないといけませんか?
これまでの例では、辞令や必要な書類は自宅に郵送してもらえることがほとんどです。弁護士から勤務先に、郵送での対応をお願いします。
自衛官は、退職を承認してもらえないことがありますか?
自衛隊法40条は、退職を承認すると任務の遂行に著しい支障が出るときに限り、必要な期間は承認しないことができると定めています。災害派遣などの場面が想定されていて、ふだんの退職でこの条文が使われる場面は多くありません。任期制の自衛官は、任用期間の中で必要な期間とされています。
懲戒処分の話が出ていても、退職代行を頼めますか?
ご相談いただけます。ただ、処分の結論が出るまで、退職の承認を待たれることがあります。懲戒免職になると退職手当が支給されないことがあるため、早い段階で経緯をそのまま弁護士に話してください。
まとめ|公務員の退職代行は弁護士に。承認の手続きを踏めば静かに進みます
公務員の退職は、任命権者に承認してもらう手続きです。承認を求める話し合いができるのは、弁護士だけです。
- 公務員は「2週間で辞められる」という民法の決まりがそのまま使えない
- 民間業者も労働組合も、公務員の退職は扱えない。頼めるのは弁護士だけ
- 国家公務員は、支障がなければ辞職を承認するのが原則(人事院規則8-12・51条)
- 自衛官は自衛隊法40条があり、退職まで1〜2か月かかることがある
- 懲戒処分の手続き中は承認が待たれることがある。連絡を絶つのは一番危ない
公務員の方は、辞めたいと思ってから実際に動くまでが長い方が多いと感じます。安定した仕事を手放すことへの迷いも、周りの目もあるからです。その間にすり減っていく姿を見るのは、私もつらい。
勤務先と戦うための手続きではありません。正しい手続きで、静かに次へ進むための退職です。

嵩原 安三郎
参考にした法令・資料
- 国家公務員法(61条・82条・108条の2・附則6条): e-Gov法令検索
- 地方公務員法(6条・29条・52条・58条): e-Gov法令検索
- 自衛隊法(40条・46条・64条): e-Gov法令検索
- 自衛隊法施行令(54条): e-Gov法令検索
- 人事院規則八―一二(職員の任免)(51条): e-Gov法令検索
- 国家公務員退職手当法(12条・14条): e-Gov法令検索
- 民法(627条): e-Gov法令検索
- 弁護士法(72条): e-Gov法令検索
- 最高裁判所 昭和34年6月26日 第二小法廷判決: 裁判所
この記事の執筆者
フォーゲル綜合法律事務所
共同代表弁護士
嵩原 安三郎
たけはら やすさぶろう
退職・労働問題を中心に、企業と個人の双方における法的問題解決に従事。
退職代行分野において日本有数の実績を持つ。
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嵩原 安三郎
相談で「職場の組合に入っているから大丈夫ですか」と聞かれることがあります。職員団体は勤務条件について当局と話す団体で、一人ひとりの退職を代わりに進める仕組みではありません。