この記事の執筆者
フォーゲル綜合法律事務所
共同代表弁護士
嵩原 安三郎
たけはら やすさぶろう
退職・労働問題を中心に、企業と個人の双方における法的問題解決に従事。
退職代行分野において日本有数の実績を持つ。
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弁護士の嵩原安三郎です。給与明細を開くと、残業代の行に数字が入っている。でも、それが合っているのかは分からない。相談では、こう聞かれることがよくあります。
「残業代って、自分で計算できるものなんですか?」
できます。式はひとつで、「1時間あたりの賃金×割増率×残業した時間」です。月給の人は、まず月給を時給に直します。そこさえ越えれば、あとはかけ算だけです。
計算した額が、実際に払われた額より多ければ、未払いがあるかもしれません。ここでは、月給と時給それぞれの計算のしかた、割増率、計算が合わないときに疑う点を、条文と私が動画で話してきたことから書きます。
残業代の計算式は「1時間あたりの賃金×割増率×残業時間」
会社は、1日8時間・週40時間を超えて働かせてはいけないのが原則です(労働基準法32条)。これを超えた時間が、法律でいう時間外労働です。会社は、その時間に割増した賃金を払わなければなりません(同法37条)。
割増率は、働いた時間の種類で変わります。下の表は、時給1,200円の人に当てはめた例です。横にスクロールして見てください。
| 働いた時間 | 割増率(以上) | 時給1,200円なら | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 1日8時間・週40時間を超えた時間 | 1.25倍 | 1,500円 | 労働基準法37条1項、割増率の政令 |
| 月60時間を超えた時間 | 1.5倍 | 1,800円 | 労働基準法37条1項ただし書 |
| 法定休日(週1日の休日) | 1.35倍 | 1,620円 | 労働基準法37条1項、割増率の政令 |
| 夜10時〜朝5時(深夜) | 0.25倍を上乗せ | 300円を上乗せ | 労働基準法37条4項 |
| 時間外で、しかも深夜 | 1.5倍 | 1,800円 | 労働基準法施行規則20条1項 |
| 月60時間超で、しかも深夜 | 1.75倍 | 2,100円 | 労働基準法施行規則20条1項 |
| 法定休日で、しかも深夜 | 1.6倍 | 1,920円 | 労働基準法施行規則20条2項 |
出典: e-Gov法令検索の労働基準法・同施行規則・割増率の政令(末尾の参考資料にリンク)
月60時間を超えた分の1.5倍は、以前は中小企業には先送りされていました。この猶予は、令和5年4月1日になくなっています。今は、会社の大きさに関係なく1.5倍以上です。
残業、早出や休日出勤による割増賃金のチェック方法を教えてください。: 確かめよう労働条件(厚生労働省)
「8時間まで」の残業は、割増がつかないこともある
意外と知られていないのが、会社の定時と法律の8時間のずれです。たとえば定時が9時半から17時半で、休憩1時間なら、所定の労働時間は7時間です。18時半まで働いた日の1時間は、まだ8時間の内側にあります。
この1時間には、法律上は割増の義務がありません。ただし、割増がないだけで、1時間分の給料そのものは払われます。就業規則で、ここにも割増をつけている会社もあります。
週6日出勤なら、6日目は朝から時間外
もう一つ見落とされやすいのが、週40時間の枠です。1日8時間で月曜から金曜まで働けば、それだけで40時間を使い切ります。
そこへ土曜日も出勤させる会社では、土曜日の8時間は、始業から全部が時間外になります。私は動画で、週休1日で月給20万円という会社の例を出し、月に5日分近くの給料が払われていない計算になる、と話しました。
「うちは週休1日だから、土曜日も普通の出勤日だ。」
会社がそう言っても、週40時間を超えた分には割増がつきます。これは会社のルールで変えられることではありません。
【退職代行 弁護士】会社の常識は法律の非常識!残業代に関する間違った会社のルール3選!: 弁護士タケハラ退職代行ちゃんねる
- 1日8時間・週40時間を超えたら1.25倍以上(労働基準法37条)
- 月60時間を超えたら1.5倍以上。会社の大きさは関係ない
- 法定休日は1.35倍以上、深夜は0.25倍以上を上乗せ
- 定時が8時間より短い会社の「8時間まで」の残業は、割増なしのこともある
月給の残業代の計算は、まず1時間あたりの賃金を出す
月給の人は、月給を1か月の平均の所定労働時間で割って、1時間あたりの賃金を出します(労働基準法施行規則19条)。平均の所定労働時間は、1年の所定労働日数に1日の所定労働時間をかけ、12で割れば出ます。
年間休日120日、1日8時間、月給25万円(うち通勤手当1万円)の人で計算してみます。手順は6つです。
| 手順 | やること | 例の数字 |
|---|---|---|
| 1 | 1年の所定労働時間を出す | (365日−休日120日)×8時間=1,960時間 |
| 2 | 12で割って、1か月の平均を出す | 1,960時間÷12=約163.3時間 |
| 3 | 月給から、計算に入れない手当を除く | 25万円−通勤手当1万円=24万円 |
| 4 | 1時間あたりの賃金を出す | 24万円÷約163.3時間=1,469円 |
| 5 | 割増率をかける | 1,469円×1.25=1,836円 |
| 6 | その月の残業時間をかける | 1,836円×20時間=36,720円 |
計算の方法は労働基準法施行規則19条・21条、厚生労働省「確かめよう労働条件」による。1円未満は50銭未満を切り捨て、50銭以上を切り上げた。
この人が月20時間残業したなら、残業代は36,720円です。給与明細の残業代がこれより少なければ、どこかで計算が違っています。年間休日の日数は、会社のカレンダーや就業規則で確かめてください。
計算から外していい手当は7つだけ
1時間あたりの賃金を出すとき、月給から除いていい手当は法律で決まっています(労働基準法37条5項・同法施行規則21条)。家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時の賃金、1か月を超える期間ごとの賃金の7つです。
役職手当や資格手当は、この7つに入っていません。だから、基本給だけで計算するのは間違いです。逆に、名前が家族手当でも、家族の人数に関係なく全員に同じ額を払っているなら、計算に入ります。名前ではなく中身で決まります。
時給・日給の人は、もっと簡単
時給の人は、時給がそのまま1時間あたりの賃金です。時給1,200円なら、時間外は1,500円以上、深夜の時間外は1,800円以上になります。
日給の人は、日給を1日の所定労働時間で割ります。日給1万円で1日8時間なら、1時間あたり1,250円です。パートやアルバイトでも、計算のしかたは同じです。
残業時間は1分単位で数える
相談では、こんな会社の話をよく聞きます。
「うちは15分単位だから、14分までは残業にならない。」
これは通りません。残業代は1分単位が原則です。1日ごとに15分未満を切り捨てる扱いは、認められていません。
例外として、1か月の残業時間を合計したときの30分未満の端数を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げる処理は、厚生労働省も認めています。私は動画で、10本入りのお菓子を1本食べて「1本なら無料にして」とは言えない、と話しました。働いた分を買っている会社の側が、14分を切り捨てていい理由はありません。
- 1年の所定労働時間÷12で、1か月の平均の時間を出す
- 月給から家族・通勤・住宅などの7つの手当だけを除く
- 月給÷平均の時間=1時間あたりの賃金
- 1時間あたりの賃金×割増率×残業時間=残業代

嵩原 安三郎
1回の額は小さく見えるので、言い出しにくい。その遠慮で損をするのを見るのは、私はつらい。ただ、時効の3年分を合わせると、1か月分の給料に近づくこともあります。まずは毎日の終業時刻をメモしてください。
残業代の計算が合わないときに疑う3つ
自分で計算した額と、明細の額がずれている。そのとき原因になりやすいのは、だいたい次の3つです。会社が悪気なく勘違いしていることも、実は少なくありません。
固定残業代(みなし残業)があるから、で終わっていないか
「うちは残業代込みの給料だから、いくら残業しても同じだよ。」
こう言われて、計算をあきらめる方がいます。この一言で黙ってしまう方を見ると、正直もどかしい。固定残業代そのものは、法律で禁止されてはいません。ただ、有効になるための条件が厳しいのです。
厚生労働省は、固定残業代を使う会社に、3つを示すよう求めています。固定残業代を除いた基本給の額、何時間分でいくらかという計算方法、その時間を超えた分は追加で払うこと、の3つです。
固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。: 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク
最高裁も平成24年3月8日の判決で、基本給のうち割増賃金にあたる部分を区別できない以上、残業代を払ったことにはならない、と判断しています。この判決の要旨は、上のリーフレットに載っています。固定の時間を超えた分は、別に計算して請求できます。
手当の名前で押し切ろうとする会社もあります。
「役職手当を出しているんだから、それが残業代の代わりだ。」
手当が残業代として認められるには、賃金規程にそう書かれていることが前提です。私は動画で、手当の名前が給与明細と賃金規程で少しでもずれていたらだめ、と話しました。手当の説明に「残業手当や深夜手当など」と書いてあるだけでも、認められないことがあります。
【退職代行 弁護士】労働はサブスクじゃない!残業代に関する完全な誤解3つ!: 弁護士タケハラ退職代行ちゃんねる
「管理職だから出ない」と言われていないか
残業代が出ない「管理監督者」は、法律にあります(労働基準法41条2号)。ただ、課長や店長という肩書きがあるだけでは当たりません。
私は、裁判所が見ているのは主に3つだと説明してきました。経営の方針を決める場に加わっているか。出社や退社の時間を縛られていないか。人を雇う・辞めさせるを自分で決められるか、です。タイムカードを押している人は、まず当たらないと私は見ています。
もう一つ、深夜の割増は、管理監督者にも払われます。夜10時を過ぎて働いた分は、管理職でも計算に入れてください。
残業に数えていない時間がないか
労働時間は、会社の指示のもとにいる時間のことです。厚生労働省のガイドラインは、決められた制服への着替え、すぐ仕事に戻れるように待っている時間、参加が義務の研修を、労働時間の例に挙げています。
労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン: 厚生労働省
私は動画で、昼休みの電話番も労働時間になると話しました。上司にこう言われたら、その1時間は休憩ではありません。
「お昼食べるなら、ついでに電話番しといて。」
夜勤の仮眠時間も同じです。呼び出しがあればすぐ動かなければならないなら、眠っていても休憩とは言えません。
【退職代行 弁護士】貴方も見落としているかも!?実は残業代がつくもの4選!: 弁護士タケハラ退職代行ちゃんねる
始業前の時間にも、よくこう言われます。
「始業の30分前に来るのが、社会人の常識だ。」
会社の命令で早く来たなら、その30分は早出の残業です。命令がなくても、早く来て仕事をしていれば同じです。
「残業しろとは、一言も言っていない。」
これも通りません。ガイドラインは、はっきり命じた場合だけでなく、黙って求めている場合も、会社の指示による労働時間にあたるとしています。

嵩原 安三郎
「月20時間までしか書くな」と言われていたなら、実際に働いた時間で計算し直します。パソコンのログや入退館の履歴があれば、それが手がかりになります。
計算した残業代が支給額より多いとき|請求の期限は3年
計算した額が明細より多ければ、その差が未払いかもしれません。差を出したら、どの月に、何時間、いくら足りないかを書き出してください。
証拠は、タイムカードだけではありません。私は動画で、営業の人が夜に送っている業務報告のLINEも証拠になる、と話しました。
「本日はこれで業務を終了します。」
こうしたメッセージを毎晩10時に送っているのに、残業代が7時までしか出ていない。それなら、10時までが残業です。会社にいても、外にいても、在宅でも同じです。
【退職代行 弁護士】退職代行で(そうでない場合でも)残業代請求できますか?: 弁護士タケハラ退職代行ちゃんねる
さかのぼれるのは3年。古い月から消えていく
残業代を含む給料は、給料日から3年で時効になります(労働基準法115条・143条)。毎月の給料日ごとに数えるので、待っている間に古い月の分から消えていきます。
裁判になると、未払いの残業代と同じ額の「付加金」を上乗せするよう、裁判所が命じることがあります(同法114条)。これは、違反のあったときから3年以内に求めなければなりません(同法143条)。
時効を止める方法、退職後の利息、労働基準監督署や少額訴訟の使い分けは、給料未払いの記事にまとめています。
給料未払い、辞めた後でも請求できる?時効は3年です: 退職代行コラム
- 雇用契約書・就業規則・賃金規程(手当の名前を確かめる)
- 給与明細(何時間分、いくら払われたか)
- タイムカード、パソコンのログ、業務のメールやLINE
- 毎日の始業と終業の時刻を書いたメモ

嵩原 安三郎
ただ、残業代は会社からのごほうびではありません。働いた時間への対価で、法律が払うよう命じているものです。請求するかどうかは、あなたが決めていいことです。
残業代を請求して辞めたいとき|フォーゲルに頼めること
残業代が払われないまま、会社を辞めようとしている方もいると思います。会社とのやり取りを弁護士に任せたい、という相談もよく受けます。
先に、当事務所の退職代行のプランでできないことを書いておきます。当事務所は、残業代の金額を計算することはしません。資料を集めてまとめること、請求の根拠を会社に聞かれて答えること、払う気のない会社と交渉して払わせることも、プランには含まれず、別途ご相談になります。
そのうえで、スタンダード以上なら、追加料金なしで弁護士が会社に残業代を請求します(出張を伴うご依頼や裁判などは除く)。未払いの中身が分かっていることが前提です。会社がその請求に応じて払ってきた場合も、費用はいただきません。
この記事で計算した額が、そのまま役に立つのはこのためです。
「自分で計算したら、明細の額と合いませんでした。」
相談では、こう話してくださる方もいます。どの月がいくら違うかまで分かっていれば、会社への請求の話は早く進みます。
なお、円満退職あんしんプラスなら、退職を理由とした損害賠償の裁判には追加料金なしで弁護士が対応します(交通費などの実費は別途)。
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嵩原 安三郎
計算の前提になる年間休日や手当の名前が分かれば、どこで額がずれていそうか、話が早く進みます。
よくある質問
残業代の計算式を教えてください。
「1時間あたりの賃金×割増率×残業した時間」です。割増率は、1日8時間・週40時間を超えた分が1.25倍以上、月60時間を超えた分が1.5倍以上、法定休日が1.35倍以上です。夜10時から朝5時までは、さらに0.25倍以上が上乗せされます(労働基準法37条)。
月給の人は、1時間あたりの賃金をどう出せばいいですか?
月給から家族手当・通勤手当・住宅手当などを除き、1か月の平均の所定労働時間で割ります(労働基準法施行規則19条・21条)。平均の所定労働時間は「1年の所定労働日数×1日の所定労働時間÷12」で出します。
残業代を15分単位で切り捨てるのは違法ですか?
1日ごとに15分未満を切り捨てる扱いは認められません。残業代は1分単位が原則です。例外として、1か月の合計の時間に30分未満の端数が出たときに切り捨て、30分以上を1時間に切り上げる処理は、厚生労働省も認めています。
固定残業代(みなし残業)があれば、それ以上の残業代は出ませんか?
出ます。固定残業代に含まれる時間を超えた分は、追加で払われます。また、基本給と固定残業代が分けて書かれていないなど、要件を満たさない固定残業代は、残業代を払ったことになりません。
「管理職だから残業代は出ない」と言われました。
肩書きだけでは決まりません。残業代が出ない「管理監督者」(労働基準法41条2号)は、経営に関わる立場で、出退勤が自由で、人事の権限を持つ人に限られます。タイムカードで時間を管理されている課長や店長は、当たらないことが多いです。夜10時以降の深夜の割増は、管理監督者にも払われます。
残業代は、何年前の分までさかのぼって請求できますか?
給料日から3年です(労働基準法115条・143条)。古い月の分から順に請求できなくなるので、計算して差があると分かったら、早めに動いてください。
まとめ|残業代の計算は、時給に直せば自分でできる
残業代の計算は、むずかしい式ではありません。月給を時給に直し、割増率と時間をかけるだけです。
- 残業代=1時間あたりの賃金×割増率×残業時間
- 月給÷1か月の平均の所定労働時間で、1時間あたりの賃金を出す
- 除いていい手当は7つだけ。役職手当などは計算に入る
- 残業は1分単位。1日ごとの切り捨ては認められない
- 固定残業代・管理職・数えていない時間があれば、計算し直す
- 請求できるのは給料日から3年(労働基準法115条・143条)
自分の働いた時間に、いくらの値段がついているのか。それを知るだけで、会社の説明をうのみにせずに済みます。
何年も気づかずに働いてきた方ほど、計算したあとで悔しい思いをします。計算して差がなければ、それで安心できます。差があれば、取り戻すかどうかを自分で決められます。どちらにしても、知らないまま働き続けて、自分をすり減らすことはありません。残業代の計算は、会社と争うためではなく、自分の時間の値段を確かめるためのものです。

嵩原 安三郎
参考にした法令・資料
- 労働基準法(32条・35条・37条・41条・114条・115条・143条): e-Gov法令検索
- 労働基準法施行規則(19条・20条・21条): e-Gov法令検索
- 労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令: e-Gov法令検索
- 残業、早出や休日出勤による割増賃金のチェック方法を教えてください。: 確かめよう労働条件(厚生労働省)
- 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン: 厚生労働省
- 固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。: 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク
この記事の執筆者
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共同代表弁護士
嵩原 安三郎
たけはら やすさぶろう
退職・労働問題を中心に、企業と個人の双方における法的問題解決に従事。
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嵩原 安三郎
土日休みの会社で土曜に出た場合、土曜は会社が決めた休日にすぎないことが多い。そのときは休日の1.35倍ではなく、週40時間を超えた分として1.25倍で計算します。