この記事の執筆者
フォーゲル綜合法律事務所
共同代表弁護士
嵩原 安三郎
たけはら やすさぶろう
退職・労働問題を中心に、企業と個人の双方における法的問題解決に従事。
退職代行分野において日本有数の実績を持つ。
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弁護士の嵩原安三郎です。弁護士として25年、退職代行では2万人超の相談に向き合ってきました。
退職代行の相談を受けていると、申し込む直前に、こう聞かれることがよくあります。
「退職代行を使ったら、次の会社にバレて、転職で不利になりませんか?」
もう限界なのに、次の仕事のことを考えて踏みとどまっている。その慎重さを、私は責める気になれません。辞めたあとも生活は続くのですから、気にして当然です。
正直、この質問を聞くたびに、少し悔しくなります。退職代行を使う人が悪いかのような話が、先に広まっているからです。
ただ、先に結論を書きます。退職代行を使ったことが、書類や役所の手続きを通じて転職先に伝わる仕組みはありません。伝わるとしたら、人の口からです。
ここでは、転職先に伝わる経路を一つずつ確かめます。そのうえで、面接で辞め方を聞かれたときの答え方と、不利にならない辞め方を書きます。
退職代行を使うと転職で不利になる?転職先に伝わる経路は限られている
「退職代行を使った人は、どこかに記録が残る」と思っている方は少なくありません。けれど、記録に残るのは、退職代行を使ったことではありません。辞めたという事実と、その日付です。誰が会社に伝えたかは、どの書類にも書かれません。
転職先が前の会社のことを知る経路は、実際には三つくらいしかありません。一つ目は、入社の手続きで出す書類です。二つ目は、前の会社への問い合わせ、いわゆる前職調査です。三つ目は、人づてのうわさとSNSです。
一つ目の書類は、次の節で詳しく見ます。二つ目の前職調査は、今は金融機関など一部の会社に限られると、私は見ています。前の会社に聞いて辞め方が分かってしまうことは、正直あまりないと思います。
結局、気をつけるべきなのは三つ目です。同じ業界で知り合いが多い職場や、取引先どうしが近い会社では、人の口から伝わることがあります。ここは書類ではどうにもならないので、後の節で手当ての仕方を書きます。
転職先にバレるのはどんなとき|書類から分かること、分からないこと
相談では、転職先に出す書類で分かってしまわないか、とよく聞かれます。入社のときに出す書類を一枚ずつ見ても、退職代行を使ったかどうかを書く欄はありません。
たとえば源泉徴収票です。年の途中で辞めた人の源泉徴収票には、退職したことと、その年月日が書かれます。国税庁の手引きにも、そう書かれています。
分かるのは、いつ辞めたかまでです。どうやって辞めたかは、書かれません。
離職票は、そもそもハローワークで失業手当を受けるときに使う書類です。転職先が決まっている人には、たいてい要りません。当事務所のYouTubeで、離職票の仕組みを話しました。
【退職代行 弁護士】第1回(全3回)離職票と離職理由の誤解って?: 弁護士タケハラ退職代行ちゃんねる
| 書類 | 書いてあること | 退職代行が分かるか |
|---|---|---|
| 源泉徴収票 | その年の給与・税額、退職した年月日 | 分からない |
| 雇用保険被保険者証 | 雇用保険の番号 | 分からない |
| 離職票 | 辞める前の給与、離職理由(自己都合・会社都合など) | 分からない。転職先にはふつう出さない |
| 退職証明書 | 本人が求めた項目だけ(働いた期間・仕事の内容など) | 分からない。項目は本人が選べる |
出典: 国税庁「給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」、労働基準法22条をもとに当事務所作成。
転職先から退職証明書を求められることもあります。この書類は、本人が求めた項目しか書いてはいけないと決まっています(労働基準法22条3項)。働いた期間と仕事の内容だけ、のように頼めば、退職の理由も書かれません。

嵩原 安三郎
退職代行を使ったこと自体は、この条文に並んでいる項目ではありません。ただ、法律が「前の会社が次の就職の邪魔をする」ことを、昔から想定して止めてきたことは知っておいてください。
「前職はどうやって辞めたの?」と面接で聞かれたら
書類で伝わらないとなると、残るのは面接です。中途採用の面接で、こう聞く人事担当者がいます。
「前の会社は、どうやって辞めたの?」
これは実質的に、退職代行を使ったかどうかを聞く質問です。答え方は二つしかありません。嘘をつくか、正直に言うかです。
嘘をつくと、入社したあとに困ることがある
自分で退職届を出して辞めた、と答えても、たいていは分からないと思います。けれど、私は弁護士として、嘘をつくことは勧めません。入社したあとに、同僚との飲み会で話してしまう。それが上司の耳に入る。そこで初めて、問題になるからです。
経歴について嘘をついたとして、懲戒処分の話にまでなることがあります。そうなったとき、会社に納得してもらえる説明ができるかどうかが問われます。
正直に言うことは、その会社を見極める物差しになる
私は、正直に言ったほうがいいと考えています。弁護士だから、というだけではありません。そのときの相手の反応で、その会社が自分の働く場所かどうかが見えるからです。
話を聞く会社なら、まず理由を聞いてきます。
「何があったの?」
ここで、前の職場で何があり、自分でどこまで伝えようとしたかを話せばいいのです。私のところに相談に来る方の大半は、悩んで悩んで、自分でも手を尽くしてから来ています。その事情を聞いて納得してくれる会社なら、働く価値があると私は思います。
事情を聞いた人事担当者が、こう返してくれる会社もあります。
「それは、よく我慢したね。最後に弁護士を入れたのは、仕方ないよ。」
逆に、退職代行と聞いた瞬間に、話を打ち切る会社もあるでしょう。
「退職代行を使うような人は、うちには要らない。」
「弁護士を入れたの?怖いなあ。」
こう言う人が人事をしている会社で、何か困ったときに話を聞いてもらえるでしょうか。私には、そうは思えません。そこは、行かなくていい会社です。
前職調査のことも含めて、当事務所のYouTubeでこの話をしました。
【退職代行 弁護士】転職先で「前職はどうやって辞めたの?」と聞かれたら…?退職代行と言う?言わない?弁護士タケハラが解説!: 弁護士タケハラ退職代行ちゃんねる
答え方の例を、一組だけ置いておきます。
❌「自分で退職届を出して、1か月かけて辞めました。」
✅「前の職場で強い叱責が続き、自分で退職を伝えても受け取ってもらえませんでした。それで、弁護士に頼んで退職しました。」
変えたのは、嘘をやめて、辞め方の前に「自分で伝えようとしたこと」を入れたところです。聞く側が知りたいのは、退職代行を使ったかどうかより、なぜ使ったのかだからです。

嵩原 安三郎
公正な採用選考の基本: 厚生労働省
辞め方を聞くこと自体が禁じられているわけではありません。ただ、聞いた答えで、仕事の力とは関係のない決めつけをする会社かどうかは、こちらが見ていい部分です。
「退職代行利用者リスト」はあるのか|前の会社が情報を流したら
転職の不安を話していると、こんな話を持ち出す方もいます。
「退職代行を使った人のリストが、出回っていると聞きました。」
ニュースのコメント欄に、ある人事担当者がこう書いていたのを、私も読みました。
「退職代行を使った人のリストがあれば、お金を出してでも買いたい。」
正直、驚きました。ただ、今のところ、リストそのものは噂だと私は見ています。
退職代行を使われた会社は、まだ多くありません。何百社に声をかけても、集まるのは数人でしょう。会社ぐるみでそんな名簿を作れば、個人情報の漏えいとして大きな問題になります。手間も危うさも大きすぎて、割に合いません。
ただ、絶対にないとまでは言えません。欲しがる人がいれば、持ち出して売ろうとする人が出てくるのも、これまでの名簿の流出と同じです。当事務所のYouTubeで、この話を詳しくしました。
【退職代行 弁護士】「退職代行利用者リスト」が出回っている…!?弁護士タケハラが解説!: 弁護士タケハラ退職代行ちゃんねる
だからこそ、どこに頼むかで、情報の守られ方が変わります。弁護士には、仕事で知った秘密を守る義務があります(弁護士法23条)。漏らせば、弁護士会から処分を受け、資格を失うこともあります。謝って済む話ではないので、私たちは普通の会社よりずっと慎重に扱っています。
個人的には、退職代行を使った人のリストは「我慢強い人のリスト」だと思っています。ぎりぎりまで耐えて、それでも辞めさせてもらえなかった人が、最後に頼むものだからです。

嵩原 安三郎
噂を聞いて不安になったときは、何を、誰から、どう聞いたかを書き留めておいてください。あとで確かめるときの手がかりになります。
転職で不利にならないための退職代行の使い方
書類で伝わらず、面接でも説明できるなら、残るのは辞め方そのものです。退職代行を使ったこと自体は、懲戒解雇の理由になる行為ではありません。ただ、連絡もなく欠勤を何週間も続けたあとだと、話は変わってきます。
退職代行で連絡すると、会社がこう言ってくることもあります。
「勝手に辞めるなら、懲戒解雇にするからな。」
懲戒解雇は、会社が思っているよりずっとハードルが高いものです。きちんとした手続きを踏まない懲戒解雇は、無効になることも少なくありません。YouTubeでは、裁判になった例を並べて話しました。
【退職代行 弁護士】懲戒解雇になるのは誰!?みんな誤解している懲戒解雇について!: 弁護士タケハラ退職代行ちゃんねる
とはいえ、会社と争わずに済むなら、それに越したことはありません。転職で不利にならないために、私が相談者の方にお願いしていることは決まっています。
- 連絡のない欠勤を続ける前に、退職の連絡を入れる
- 進めている仕事の引き継ぎメモを、一枚残す
- 会社から借りている物(社員証・鍵・制服・端末)を返す
- 辞めた経緯をSNSに書かない。同じ業界の知人にも広めない
- 退職証明書は、必要な項目だけを選んで頼む
SNSは、思っている以上に見られています。退職できた安心感から、つい経緯を書きたくなる気持ちは分かります。けれど、それが一番分かりやすい経路になってしまいます。せっかく辞められたのに、自分の書き込みで苦しくなるのは、あまりに残念です。即日で辞めるときの引き継ぎの残し方は、別の記事で詳しく書きました。
退職代行で即日退職できる?退職日が決まる仕組みと「2週間」の扱い: 退職代行コラム

嵩原 安三郎
引き継ぎを残し、借りた物を返して辞めた人について、悪いうわさは立ちにくいものです。転職で一番守りたいのは、辞めたあとの評判です。
フォーゲルの退職代行と、転職のための書類
先に申し上げておきます。転職先があなたの辞め方をどう受け止めるかまでは、私は約束できません。会社の考え方は、それぞれ違うからです。
そのうえで、フォーゲルでできることをお伝えします。弁護士が代理人として会社に連絡し、退職日の話し合いと、離職票や源泉徴収票などの書類の請求を行います。退職したことを家族を含めて第三者に伝えないよう、会社に伝えることもできます。公式サイトにも、そう書いています。
退職代行は安心確実な弁護士へ【フォーゲル綜合法律事務所】: フォーゲル綜合法律事務所
公式サイトのよくある質問にも、関連会社のような場合でない限り、新しい職場に退職の方法が漏れることはあまり考えられない、と書いています。退職の連絡をした日から60日間は、会社からの連絡も私たちが受けます。
- ライトプラン 22,000円
退職の意思を伝えます。引継ぎなどの連絡は、ひな形を使ってご自身で行います。 - 円満退職スタンダード 25,000円
弁護士が代理人として交渉します。有給休暇の取得や残業代の請求も追加費用なしです。 - 円満退職あんしんプラス 55,000円
退職を理由に損害賠償の裁判を起こされても、追加料金なしで弁護士が対応します(交通費などの実費は別途)。退職金の請求なども含みます。
公務員・自衛隊員の方や、業務委託で働く方には、別のプランがあります。どれが合うかは、プランチェッカーで確かめられます。
どのプランが合うか分からない方は、10秒で答えられるプランチェッカーで確かめてください。
出張を伴うご依頼と裁判などの手続きは、別途ご相談になります。ただし、円満退職あんしんプラスなら、退職を理由とした損害賠償の裁判には追加料金なしで弁護士が対応します(交通費などの実費は別途)。料金の違いは、別の記事で詳しく書きました。
退職代行の料金相場|弁護士・労働組合・民間業者の違いと追加費用の注意点: 退職代行コラム

嵩原 安三郎
退職証明書が必要なら、どの項目を入れるかも一緒に決めます。転職先に出す書類は、あらかじめそろえておくほうが、入社の前後で慌てずに済みます。
よくある質問
退職代行を使ったことは、履歴書に書かないといけませんか?
書く必要はありません。履歴書の職歴欄は、どこでいつまで働いたかを書くところで、辞め方を書く欄ではありません。退職の理由は「一身上の都合により退職」と書く形が一般的です。
転職先に源泉徴収票を出すと、退職代行を使ったことが分かりますか?
分かりません。源泉徴収票には、年の途中で退職したことと、その年月日が書かれます。どうやって辞めたかを書く欄はありません。
前の会社が、転職先に退職代行のことを話すことはありますか?
前の会社に問い合わせる前職調査をする会社は、今は限られていると私は見ています。また、会社が従業員の情報を本人の同意なく外に渡すことは、個人情報保護法で原則として禁止されています。心配なときは、第三者に伝えないよう、弁護士から会社に伝えることもできます。
転職先から退職証明書を出してと言われました。退職代行のことが書かれますか?
書かれません。退職証明書には、本人が求めた項目しか書いてはいけないと、労働基準法22条で決まっています。働いた期間と仕事の内容だけ、のように項目を選んで頼めます。
転職先が決まっていても、退職代行は使えますか?
使えます。入社日が決まっているなら、申し込むときに伝えてください。その日に間に合うよう、退職日を会社と話します。ただ、会社との話し合いになるので、いつ退職日が決まるかまでは約束できません。
まとめ|退職代行で転職が不利になるかは、書類ではなく辞め方と答え方で決まる
退職代行を使ったことは、源泉徴収票にも離職票にも退職証明書にも書かれません。転職先に伝わるとしたら、人の口からです。
- 転職先に出す書類に、退職代行を使ったかどうかを書く欄はない
- 退職証明書は、本人が求めた項目しか書けない(労働基準法22条3項)
- 前職調査をする会社は限られ、従業員の情報を同意なく渡すことは原則禁止
- 面接で辞め方を聞かれたら、嘘をつかず、なぜ使ったかを話す
- 連絡のない欠勤を続けず、引き継ぎと返却をして辞める
退職代行を使う人の大半は、楽をしたい人ではありません。むしろ真面目で、ぎりぎりまで我慢してきた人です。そう見てくれる会社は、ちゃんとあります。退職代行を使う人が実際にどんな人か、別の記事でも書きました。
退職代行は「頭おかしい」?デメリット・トラブル事例と後悔しない使い方: 退職代行コラム
次の会社のために、今の職場で心と体をすり減らし続ける必要はありません。転職の不安は、辞め方と答え方で小さくできます。

嵩原 安三郎
参考にした法令・資料
- 労働基準法(22条): e-Gov法令検索
- 個人情報の保護に関する法律(27条): e-Gov法令検索
- 弁護士法(23条): e-Gov法令検索
- 「中途就・退職」欄: 国税庁
- 公正な採用選考の基本: 厚生労働省
この記事の執筆者
フォーゲル綜合法律事務所
共同代表弁護士
嵩原 安三郎
たけはら やすさぶろう
退職・労働問題を中心に、企業と個人の双方における法的問題解決に従事。
退職代行分野において日本有数の実績を持つ。
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嵩原 安三郎
もちろん、法律があるから誰も話さない、とまでは言えません。ただ、会社として前職調査に答えることには、それなりの危うさがある、ということです。