この記事の執筆者
フォーゲル綜合法律事務所
共同代表弁護士
嵩原 安三郎
たけはら やすさぶろう
退職・労働問題を中心に、企業と個人の双方における法的問題解決に従事。
退職代行分野において日本有数の実績を持つ。
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弁護士の嵩原安三郎です。
業務委託で働いている方から、最初に聞かれることはたいてい同じです。
「業務委託だから、退職代行は使えないですよね?」
この質問を聞くたびに、私は悔しくなります。業務委託と言われただけで、辞める道はないと思い込まされているからです。
業務委託の相談は、それだけで断られることも多いと聞きます。確かに、本当の業務委託は、雇用のように2週間で終わるとは限りません。
ただ、私のところに業務委託の相談に来る方の大半は、本当の業務委託ではありません。契約書の名前が業務委託になっているだけで、働き方は会社員と変わらないのです。
ここでは、本当の業務委託かどうかの見分け方から書きます。そのうえで、途中で解約するときの違約金や損害賠償のリスクと、辞め方の手順を書きます。
業務委託を辞めたいとき、まず確かめるのは「本当の業務委託か」
業務委託をやめるのは、退職ではありません。契約の解約です。雇用なら、辞めると伝えてから2週間で終わります。業務委託なら、契約の種類と契約書の中身で、やめ方が決まります。
ただし、雇用か業務委託かは、契約書の名前では決まりません。働き方です。厚生労働省のサイトにも、こう書かれています。
一番わかりやすい目印は、仕事を断る自由があるかどうかです。本当の業務委託なら、受ける側は独立した事業者です。頼まれた仕事を、自分の都合で断れます。
当事務所のYouTubeでは、運送会社どうしのたとえで、こう話しました。
【退職代行 弁護士】会社と業務委託契約を結んでいますが退職できますか?: 弁護士タケハラ退職代行ちゃんねる
山田運送から仕事を受けている嵩原運送が、こう返せるかどうかです。
「その日は休みなので、無理です。」
「10時は無理です。11時からなら行けます。」
「明日は、うちのワタナベに行かせます。」
これが言えるなら、本当の業務委託です。けれど、実際の相談では、こう返されている方がほとんどです。
「何を言うてんねん。10時に来い。」
こう言われて逆らえないなら、それは業務委託の形をした雇用です。
| 確かめること | 本当の業務委託 | 雇用に近い |
|---|---|---|
| 仕事を断れるか | 自分の都合で断れる | 断れない・断ると責められる |
| やり方の指示 | 結果だけ求められる | 手順や細かいことまで指示される |
| 時間と場所 | 自分で決められる | 出勤時間やシフトが決まっている |
| 代わりの人 | 人に任せてもよい | 本人が来ないといけない |
| 報酬の決まり方 | 仕事の成果に払われる | 働いた時間や日数で決まる |
出典: 労働基準法研究会報告「労働基準法の『労働者』の判断基準について」(昭和60年)の項目をもとに当事務所作成。一つで決まるのではなく、全体を見て判断します。
偽装の業務委託なら、退職と同じく2週間で辞められる
先日も、正社員の方からこんな相談がありました。社長に呼ばれて、こう言われたそうです。
「ごめんやけど、来月から業務委託にしてくれないか。」
会社が業務委託にしたがる理由は、働く人が得をするからではありません。会社が得をするからです。
業務委託にすると、会社は社会保険料を負担しなくて済みます。仕事を出さない日は、報酬を払わなくて済みます。有給休暇も、産休も育休も、残業代もありません。辞めさせるときの解雇の決まりも、かかりません。
宅配の業務委託では、1件届けて120円ほど、という契約書を見ることがあります。留守なら、もう一度行かなければなりません。正直、この金額では、時給にすると最低賃金を下回るのではないかと思います。
YouTubeでは、これを「地獄の契約」と呼んで、こう話しました。
【退職代行 弁護士】地獄の入り口、「業務委託契約」を全くオススメしない理由: 弁護士タケハラ退職代行ちゃんねる
少し強い言い方ですが、私は今でもそう思っています。
もちろん、本当の業務委託にも良いところはあります。嫌な仕事は受けなくていい。休みも、働く時間も、自分で決められる。それができるなら、普通の契約です。
困るのは、名前だけ業務委託にして、会社がいつも通り指示を出している場合です。働く側は、自由もなく、守りもない。私が一番腹が立つのは、この形です。
そして、実態が雇用なら、辞めるときは雇用のルールで考えます。期間の定めがなければ、辞めると伝えてから2週間で終わります。契約書に「解約は3か月前に通知」と書いてあっても、民法の2週間が先に立ちます。
私が業務委託の相談を受けるときも、まず中身を聞きます。雇用だと十分に言えるなら、雇用契約の終了として、会社に退職を伝えます。退職日までの日は、有給休暇と欠勤で埋める形を取れます。この流れは、即日退職の記事で詳しく書きました。
退職代行で即日退職できる?退職日が決まる仕組みと「2週間」の扱い: 退職代行コラム

嵩原 安三郎
「途中で辞めたら違約金」と書かれた業務委託の契約書は、実態が雇用なら、この条文にぶつかります。契約書を見せてもらえれば、どちらに当たるかを一緒に確かめます。
本当の業務委託を途中で解約するときのルール
ここからは、本当の業務委託の場合です。業務委託という言葉は法律の用語ではありません。中身によって、民法の「委任・準委任」か「請負」に当たり、途中でやめるときのルールが違います。
会社からは、よくこう言われます。
「業務委託なんだから、勝手にやめたら契約違反だぞ。」
もっとも、契約の種類によっては、やめること自体は違反になりません。
委任・準委任なら、いつでも解除できる
事務の処理や、店の運営、営業、受付のように、仕事をこなすこと自体を頼まれる契約は、多くが準委任です。準委任は、どちらからでも、いつでも解除できます(民法651条1項)。
ただし、相手に不利な時期に解除したときは、それで生じた損害を払わなければならないことがあります(民法651条2項)。やむを得ない事情があれば、払わなくて構いません。体を壊してまで続ける仕事はない、というのは、ここでも同じです。
請負なら、契約書の解約の定めと話し合いで決まる
ホームページを一つ作る、荷物を届ける、のように、仕事を完成させることを約束する契約は請負です。請負には、受ける側からいつでも解除できるという条文がありません。
ですから、請負では、契約書の解約の定めと、会社との話し合いで、やめ方が決まります。とはいえ、次の仕事を受けないことは、本当の業務委託なら、もともと自由です。
本当の業務委託には、次の仕事を受けない自由がある
本当の業務委託の方には、私はこう伝えます。雇用なら仕事を断れませんが、業務委託なら断れます。
「申し訳ありません。明日から、御社の仕事はお受けしません。」
これが言えるのが、本当の業務委託です。結局、契約がなくなるのと同じ結果になります。私は、この形で業務委託を終わらせてきました。
| 契約の形 | 途中でやめられるか | 気をつけること |
|---|---|---|
| 実態は雇用(偽装の業務委託) | 期間の定めがなければ、申し入れから2週間(民法627条) | 違約金の条項は効力がない(労働基準法16条) |
| 委任・準委任 | いつでも解除できる(民法651条1項) | 相手に不利な時期だと、損害を払うことがある |
| 請負 | 契約書の解約の定めと話し合いによる | 完成前の仕事の扱いと、報酬の精算 |
出典: 民法627条・632条・651条・656条、労働基準法16条をもとに当事務所作成。どれに当たるかは、契約書と働き方の実態で決まります。
2024年11月に、フリーランスを守る新しい法律ができました。ただ、その中の「30日前までの予告」は、発注する会社が契約を切るときの決まりです。あなたがやめるときに、30日待たなければならないという決まりではありません。
知っていますか?フリーランスの取引に関する新しい法律: 厚生労働省

嵩原 安三郎
実際には、一つの契約に両方が混ざっていることもあります。どちらに近いかで、解約のときに言えることが変わるので、契約書は全部そろえておいてください。
業務委託の解約で、違約金・損害賠償を請求されたら
業務委託をやめると伝えると、会社からこう言われることがあります。
「契約書に違約金って書いてあるだろ。払ってもらうからな。」
まず、実態が雇用なら、先ほど書いた通り、違約金の条項に効力はありません。本当の業務委託の場合も、契約書に書いてあれば、その金額がそのまま認められるわけではありません。
民法では、違約金は、損害の額を前もって見積もったものと扱われます(民法420条3項)。実際の損害と比べてあまりに大きい金額なら、争う余地があります。
損害賠償も同じです。会社に実際に損害が出ていて、それがあなたのやめ方から生じたものでなければ、払う理由はありません。
もう一つ、業務委託でよく見るのが、会社から借りている物のお金です。宅配の仕事では、会社から車をリースされ、リース料や事務手数料として月に4万円から5万円を引かれている方がいます。
「やめるなら、残りのリース料を一括で払え。」
こんなことを言われたら、怖いと感じて当然です。
こう言われて、怖くなって相談に来る方もいます。正直、こういう契約書を読むたびに、私は胸が苦しくなります。一括で払えないなら、分けて払う話し合いができます。
- その場でサインしない。支払いの約束もしない
- 契約書・請求書・会社とのメッセージを、全部残しておく
- 実態が雇用かどうかを、先に確かめる
- 借りている物(車・端末・制服)の返し方と、残りの支払いを書き出す

嵩原 安三郎
違約金の条項も、損害の見積もりとして扱われます。あまりに大きい金額は、公の秩序に反するとして、効力を争う余地があります。慌てて払う前に、一度見せてください。
業務委託の辞め方|退職代行を使う前に準備すること
辞めると伝えた途端に、こう返されることもあります。
「お前は社員じゃないんだから、退職なんてないんだよ。」
業務委託をやめる準備は、雇用の退職より少しだけ多くなります。契約書が、話し合いのよりどころになるからです。
相談に来る方の中には、契約書を一度も受け取っていない方もいます。それでも、あきらめないでください。メッセージや報酬の振込の記録から、どう働いていたかは見えてきます。
- 業務委託契約書(受け取っていなければ、募集の画面や条件を伝えられたメッセージ)
- シフト表・出勤の指示・業務の指示が分かるメッセージ
- 報酬の明細と、振込の記録
- 借りている物(車・端末・制服・鍵)の一覧
- 進めている仕事の引き継ぎメモ
引き継ぎのメモは、一枚あれば十分です。取引先や、途中の仕事のことだけ残してください。それがあるかないかで、あとから会社に言われることが大きく変わります。
もう一つ、知っておいてほしいことがあります。民間の代行業者は、会社と交渉できません。損害賠償の話し合いや裁判で、あなたの代理人になれるのも、弁護士だけです。業務委託の解約は、契約の中身をめぐる交渉になりやすいので、ここは選ぶときに確かめてください。

嵩原 安三郎
雇用か業務委託かは、会社が決めることではありません。働き方で決まります。
フォーゲルの業務委託解消プラン
先に申し上げておきます。業務委託を解消する日がいつになるかは、契約の中身と会社との話し合いで決まります。私はそこまでは約束できません。
また、フォーゲルの業務委託解消プランには、まだもらっていない報酬を請求する手続きは含まれていません。出張を伴うご依頼と裁判などの手続きも、別途ご相談です。ただし、業務委託解消あんしんプラスなら、損害賠償の裁判を起こされても、追加料金なしで弁護士が対応します(交通費などの実費は別途)。実態が雇用で円満退職あんしんプラスを選んだ場合も、退職を理由とした損害賠償の裁判に追加料金なしで対応します(交通費などの実費は別途)。
そのうえで、プランをお伝えします。どちらのプランでも、まず契約書と働き方を見て、雇用に近いかどうかを確かめます。雇用に近ければ、雇用契約の終了として退職を伝えます。本当の業務委託なら、契約の解消を会社と交渉します。
契約解消の連絡をした日から60日間は、会社からの連絡を弁護士が受けます。公式サイトにも、そう書いています。
退職代行は安心確実な弁護士へ【フォーゲル綜合法律事務所】: フォーゲル綜合法律事務所
- 業務委託解消スタンダード 55,000円
業務委託契約をすぐに解消するための交渉を代行します。雇用に近いかどうかの確認と、連絡した日から60日間の会社とのやり取りを含みます。 - 業務委託解消あんしんプラス 110,000円
スタンダードの内容に加え、損害賠償の請求と裁判への対応まで追加費用なしです。会社からの借入金の交渉も含みます。
実態が雇用なら、円満退職スタンダード(25,000円)や円満退職あんしんプラス(55,000円)が合うこともあります。どれが合うかは、プランチェッカーで確かめられます。
どのプランが合うか分からない方は、10秒で答えられるプランチェッカーで確かめてください。
料金の違いは、別の記事で詳しく書きました。
退職代行の料金相場|弁護士・労働組合・民間業者の違いと追加費用の注意点: 退職代行コラム

嵩原 安三郎
この二つがあれば、雇用に近いかどうかと、どちらのプランが合うかを、申し込む前にお伝えできます。
よくある質問
業務委託でも、退職代行は使えますか?
使えます。働き方の実態が雇用に近ければ、雇用契約の終了として、辞めると伝えてから2週間で辞められます。本当の業務委託なら、契約の解約として会社と話し合います。どちらに当たるかは、契約書と働き方を見て判断します。
契約書に「解約は3か月前までに通知すること」と書いてあります。守らないといけませんか?
実態が雇用なら、民法の2週間が先に立ちます。本当の業務委託なら、契約書の定めが基本になります。ただ、体調を崩しているなど、やむを得ない事情があれば、話は変わります。
途中で辞めたら違約金を払う、と契約書に書いてあります。払わないといけませんか?
実態が雇用なら、違約金を決めておくこと自体が労働基準法16条で禁止されています。本当の業務委託でも、違約金は損害の見積もりとして扱われ、金額があまりに大きければ争う余地があります。その場でサインや支払いの約束はしないでください。
業務委託を途中でやめたら、まだもらっていない報酬はどうなりますか?
すでに終えた仕事の分は、払ってもらうのが原則です。ただ、フォーゲルの業務委託解消プランには、報酬を請求する手続きは含まれていません。未払いの報酬がある場合は、申し込む前にお知らせください。
「来月から業務委託にしてくれないか」と言われました。断れますか?
断れます。雇用契約の中身は、会社と働く人の合意で変えるものです(労働契約法8条)。同意しなければ、雇用契約のままです。
まとめ|業務委託を辞めるときは「本当の業務委託か」から始める
業務委託をやめるのは、退職ではなく契約の解約です。けれど、契約書の名前が業務委託でも、働き方が雇用なら、雇用のルールで辞められます。
- 雇用か業務委託かは、契約書の名前ではなく、働き方の実態で決まる
- 実態が雇用なら、期間の定めがなければ、辞めると伝えてから2週間で終わる
- 実態が雇用なら、違約金の条項は効力がない(労働基準法16条)
- 本当の業務委託でも、委任・準委任ならいつでも解除できる。請負は契約書と話し合いによる
- 違約金や損害賠償を言われても、その場でサインや支払いの約束をしない
「業務委託だから、辞められない」と思い込んで、何か月も我慢している方がいます。その時間が、私は一番もどかしいです。
会社と争うために辞めるのではありません。これ以上すり減らずに、次へ進むための手続きです。

嵩原 安三郎
参考にした法令・資料
- 民法(420条・627条・632条・651条・656条): e-Gov法令検索
- 労働基準法(9条・16条): e-Gov法令検索
- 労働契約法(8条): e-Gov法令検索
- 労働基準法における「労働者」とは: 厚生労働省
- 知っていますか?フリーランスの取引に関する新しい法律: 厚生労働省
この記事の執筆者
フォーゲル綜合法律事務所
共同代表弁護士
嵩原 安三郎
たけはら やすさぶろう
退職・労働問題を中心に、企業と個人の双方における法的問題解決に従事。
退職代行分野において日本有数の実績を持つ。
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嵩原 安三郎
判断の物差しは、昭和60年の研究会報告で整理されたものが、今も役所と裁判所で使われています。契約書の名前ではなく、実際の働き方を一つずつ見ていく、ということです。