この記事の執筆者
フォーゲル綜合法律事務所
共同代表弁護士
嵩原 安三郎
たけはら やすさぶろう
退職・労働問題を中心に、企業と個人の双方における法的問題解決に従事。
退職代行分野において日本有数の実績を持つ。
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弁護士の嵩原安三郎です。弁護士として25年、退職代行では2万人超の相談に向き合ってきました。
2026年、退職代行サービスの運営会社の元社長が、弁護士法違反で有罪判決を受けました。それから、相談の最初にこう聞かれることが増えました。
「私が頼もうとしている退職代行は、違法じゃないですか?」
「前に使った業者が捕まったら、私も何か言われるんでしょうか。」
もう会社に行けないほど追い詰められているのに、頼む先が違法かどうかまで心配しないといけない。正直、気の毒だと思います。本来は、業界の側が先にきちんとしておくべき話です。
先に結論を書きます。退職代行を頼んだ人が、非弁行為で罰せられることはありません。困るのは、業者が途中で動けなくなり、退職の話が宙に浮いたときです。
ここでは、非弁行為とは何か、どこからが違法になるのかを条文から確かめます。そのうえで、業者の見分け方と、頼む人にとっての本当のリスクを書きます。
退職代行の非弁行為とは?弁護士法72条が禁じていること
非弁行為とは、弁護士でない人が、お金をもらって他人の法律の問題を扱うことです。弁護士法72条が、これを禁じています。条文の中心は、次の部分です。
「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で(中略)法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。」
ポイントは三つです。お金をもらっていること。他人の法律の問題を扱うこと。それを仕事として繰り返していること。この三つがそろうと、非弁行為になります。
最後の「周旋」は、あまり聞かない言葉だと思います。お金をもらって、法律の問題を弁護士などに紹介することです。自分で交渉しなくても、紹介でお金を受け取れば違反になります。
違反した人には、2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金が科されます(弁護士法77条)。罰金で済む話ではなく、れっきとした犯罪です。
民間の退職代行はどこから違法?「伝える」と「交渉する」の線引き
民間の退職代行業者が、すべて違法というわけではありません。本人の「辞めます」という意思を、そのまま会社に伝えるだけなら、法律の問題を扱ったことにはならないからです。
違法になるのは、会社が反対したあとです。会社がこう言ってきたとします。
「退職は認めない。辞めるなら、引き継ぎが終わるまで来てもらう。」
ここで業者が、こう返したとします。
「法律では、退職は2週間で成立します。認めないのはおかしいですよ。」
これは、もう説得です。法律を持ち出して会社の考えを変えさせようとすれば、それは交渉です。弁護士でない業者には、できません。
東京弁護士会が示した「非弁行為になる例」
東京弁護士会の非弁護士取締委員会は、退職代行で非弁行為になる例を公開しています。その一つが、残業代の例です。
会社は「もう辞めるのだから、残業代は払わない」と言いました。そこで業者が「それは法律に違反する」「計算すると○円になる」と説明して、残業代が払われることになった、という事例です。東京弁護士会は、この業者の行為を非弁行為だと書いています。
退職の場面では、会社がこう言ってくることも珍しくありません。
「有給なんて、辞める人には取らせない。」
残業代のほかにも、有給休暇の取得、退職金、パワハラの慰謝料、退職日の調整は、どれも法律の問題です。会社と意見が分かれた時点で、業者は手を出せなくなります。
「通知するだけで辞められる」とは限らない
業者のサイトには、退職は通知だけで成立するから交渉は要らない、と書かれていることがあります。ただ、2週間で辞められるという決まり(民法627条1項)は、期間の定めのない雇用の話です。
契約社員のように期間が決まっている人、業務委託で働く人、公務員は、この決まりでは辞められません。即日で辞めたいときも、会社の同意が要ります。つまり、交渉が必要になる場面は、思っているより多いのです。
当事務所のYouTubeで、民間業者に頼んでも問題が起きにくいケースを七つ挙げて話しました。会社がすんなり退職を認める場合なら、業者でも足ります。
【退職代行 弁護士】弁護士タケハラがこっそり解説!弁護士でない退職代行業者を使っても問題ないケース7選: 弁護士タケハラ退職代行ちゃんねる

嵩原 安三郎
それなのに、退職できなかった例は一件もないとうたう民間業者があれば、私は首をかしげます。全部の会社がすぐ認めたのか、それとも交渉をしたのか。どちらなのかは、頼む側からは見えません。
退職代行で非弁行為が問われた事件|運営会社の元社長に有罪判決
非弁行為は、これまで「グレー」と言われ続けてきました。それが2026年、刑事事件として形になりました。
2026年8月28日、東京地裁は、大手の退職代行サービスの運営会社の元社長に、懲役2年・執行猶予3年の判決を言い渡しました。妻にも有罪判決が出て、会社には罰金200万円が科されています。
「モームリ」利用者を報酬目的で弁護士に紹介、運営会社元社長に懲役2年・執行猶予3年の判決…「大規模かつ職業的犯行」: 読売新聞オンライン
報道によれば、問われたのは交渉そのものではなく「周旋」です。退職を希望する利用者174人を、報酬目的で弁護士2人に紹介していました。紹介の報酬は、うその業務委託費の名目で受け取っていたと報じられています。
自分で交渉しなければ大丈夫、ではないということです。交渉が必要になった利用者を、お金をもらって弁護士へ回すことも、法律は禁じています。

嵩原 安三郎
同じ弁護士として、正直、悔しい話です。退職代行が、頼む人のためのものではなく、紹介料を生む仕組みになっていた。そこが一番の問題だと私は考えています。
労働組合の退職代行は違法?団体交渉と「実態のない組合」
ここで誤解してほしくないのは、労働組合の退職代行です。労働組合が会社と交渉すること自体は、違法ではありません。
働く人が団結して、会社と団体交渉をする権利は、憲法28条で保障されています。労働組合法6条も、組合の代表者に、組合員のために会社と交渉する権限を認めています(日本国憲法・労働組合法)。実態のある労働組合が、組合員のために会社と話すのは、法律が認めたやり方です。
東京弁護士会が注意を呼びかけている二つの形
業者のサイトには、こんな言葉が並んでいることがあります。
「提携先の労働組合が対応するので、交渉もできます。」
一つは、業者が労働組合と「提携」している形です。業者がお金を受け取り、交渉が必要になったら提携先の組合に任せる。東京弁護士会は、お金を受け取って法律の問題の処理を他者に斡旋することは非弁行為だ、と書いています。
もう一つは、組合とは名ばかりで、実態が伴っていない場合です。東京弁護士会は、こうした組合は適法な労働組合とはいえず、団体交渉もできない、と指摘しています。
私が勧めている確かめ方は、料金の支払先
労働組合が運営していると書いてあるのに、料金の振込先が株式会社や合同会社になっている。そういうときは、慎重に見たほうがいいと私は考えています。お金を受け取っている先が、実際の運営元である可能性が高いからです。
もちろん、それだけで違法とは決められません。ただ、実態のある労働組合なら、組合の口座で受け取れるはずです。私も会社側の代理人として組合と団体交渉をしますが、解決金を株式会社に振り込むという話は聞いたことがありません。YouTubeでは、この点を詳しく話しました。
【退職代行 弁護士】退職代行業者の「労働組合運営です」は嘘かも…合法を装う違法労働組合の見分け方。振込先が⚫️⚫️ならキケン!: 弁護士タケハラ退職代行ちゃんねる

嵩原 安三郎
運営元ごとに法律上できることの違いは、別の記事でまとめました。
退職代行とは?仕組み・流れと、弁護士・労働組合・民間業者の選び方: 退職代行コラム
非弁行為の業者に頼んだら?依頼者が負うリスク
頼んだ人が罰せられることはない
まず、一番気になるところからです。非弁行為をしている業者に頼んだ人が、罪に問われることはありません。
最高裁は、弁護士でない人に自分の法律問題の解決を頼み、報酬を払った人について、弁護士法違反の教唆にはならないと判断しています。法律が罰しているのは、お金をもらって扱う側だけです。
最高裁判所 昭和43年12月24日 第三小法廷判決(昭和42年(あ)第1988号): 裁判所
本当のリスクは、退職の話が途中で止まること
罰せられないからといって、困らないわけではありません。私のところには、こういう相談が来ます。
「別の退職代行に頼んでいたんですが、会社に連絡したあとで、業者と連絡がつかなくなりました。続きをお願いできませんか。」
多いのは、会社から「この人は業務委託だ」と言われた場合です。業者は、そこから先が交渉になるので手を引きます。法律を守るなら、それが正しい対応です。けれど、頼んだ人は、会社に連絡が入ったあとの一番気まずい状態で、一人残されます。
業者からは、こんな連絡が来るそうです。
「会社に確認したら、業務委託だそうです。うちでは対応できないので、あとはご自身でお願いします。」
こうした相談を受けるたびに、正直つらくなります。
【退職代行 弁護士】実話!退職代行の怖い話。民間の退職代行業者に依頼した後に突然業者と連絡がつかなくなった話: 弁護士タケハラ退職代行ちゃんねる
会社の側が、業者との連絡を断ることもあります。東京弁護士会も、会社が「非弁行為ではないか」と言って連絡を拒む例を紹介しています。
「業者とは話しません。本人から連絡させてください。」
会社にそう言われると、話はそこで止まります。そうなると、本人が自分で会社に連絡し直すしかありません。
離職票や最後の給与が届かないときも、同じです。会社に督促する段階で、業者が動けなくなることがあります。
【退職代行 弁護士】労働組合型の退職代行業者は会社と交渉をしていますか!?: 弁護士タケハラ退職代行ちゃんねる
業務委託で働いている方の辞め方は、別の記事で詳しく書きました。
業務委託契約を途中で解約・退職したい|違約金・損害賠償のリスクと辞め方: 退職代行コラム

嵩原 安三郎
頼み直しになったときは、業者と会社のやり取りを、できるだけ残しておいてください。何を誰に伝えたかが分かれば、続きを進めやすくなります。
違法な退職代行業者の見分け方|申し込む前に確かめる5つのこと
違法かどうかを、頼む側が完全に見抜くのは難しいことです。ただ、申し込む前に確かめられることはあります。私が相談者の方にお伝えしているのは、次の五つです。
- 運営元は、弁護士・労働組合・民間業者のどれか
- 会社が反対したとき、誰が会社と話すのか
- 料金の振込先は、運営元と同じ名義か
- 業務委託・契約社員・公務員の依頼を、どう扱うと書いているか
- 「交渉して〇〇を勝ち取った」と、民間業者が実績に書いていないか
三つ目の振込先は、申し込みの前に聞いてかまいません。答えをはぐらかすところは、避けたほうが安心です。
五つ目は、少し意外かもしれません。民間業者のサイトに、こんな実績が書かれていることがあります。
「会社と交渉して、有給を全部取らせました。」
民間業者がこう書いていたら、それは自分で非弁行為をしたと書いているのと同じです。頼もしく見える言葉ほど、気をつけて読んでください。

嵩原 安三郎
会社が素直に認めそうか、揉めそうか。それを考えて、最初の頼み先を選んでください。運営元ごとの料金の違いは、別の記事に書きました。
退職代行の料金相場|弁護士・労働組合・民間業者の違いと追加費用の注意点: 退職代行コラム
フォーゲルの退職代行は、弁護士が代理人として会社と話します
私たちがしているのは、正確には「代行」ではなく「代理」です。代理人として、会社と法律の問題について話すことは、弁護士にしかできません。
【退職代行 弁護士】会社の就業規則に変化!?退職代行業者の介入は認められない?: 弁護士タケハラ退職代行ちゃんねる
会社が退職を認めないと言っても、そこで手を引くことはありません。代理人として、退職日や有給休暇の話を続けます。離職票などの書類が届かないときの督促も、私たちがします。
残業代は、会社に支払いを求める請求までがプランに入っています。金額の計算や、払おうとしない会社との交渉は、別途ご相談になります。公式サイトにも、そう書いています。
退職代行は安心確実な弁護士へ【フォーゲル綜合法律事務所】: フォーゲル綜合法律事務所
一方で、お約束できないこともあります。会社がどう答えるかは会社しだいなので、退職日がいつ決まるかまでは約束できません。そのうえで、選べるプランは次のとおりです。
- ライトプラン 22,000円
退職の意思を伝えます。引継ぎなどの連絡は、ひな形を使ってご自身で行います。 - 円満退職スタンダード 25,000円
弁護士が代理人として交渉します。有給休暇の取得や残業代の請求も追加費用なしです。 - 円満退職あんしんプラス 55,000円
退職を理由に損害賠償の裁判を起こされても、追加料金なしで弁護士が対応します(交通費などの実費は別途)。退職金の請求なども含みます。
公務員・自衛隊員の方や、業務委託で働く方には、別のプランがあります。どれが合うかは、プランチェッカーで確かめられます。
どのプランが合うか分からない方は、10秒で答えられるプランチェッカーで確かめてください。
出張を伴うご依頼と裁判などの手続きは、別途ご相談になります。ただし、円満退職あんしんプラスなら、退職を理由とした損害賠償の裁判には追加料金なしで弁護士が対応します(交通費などの実費は別途)。

嵩原 安三郎
そのときは、業者とのやり取りの画面と、会社に何を伝えたかが分かるものを用意してもらえると助かります。どこから続きを始めればいいかが、早く分かります。
よくある質問
非弁行為をしている業者に頼んだら、私も罰せられますか?
罰せられません。弁護士でない人に自分の法律問題の解決を頼み、お金を払った人は、弁護士法違反の教唆にもならないと、最高裁が判断しています(昭和43年12月24日判決)。ただ、業者が途中で手を引くなど、退職の手続きで困ることはあります。
労働組合の退職代行は違法ですか?
違法ではありません。労働組合には、会社と団体交渉をする権利が憲法と労働組合法で認められています。ただ、東京弁護士会は、労働組合としての実態が伴っていない場合は団体交渉はできない、と注意を呼びかけています。
民間の退職代行業者は、何をすると非弁行為になりますか?
本人に代わって、会社と法律の問題について話し合うと、非弁行為になるおそれがあります。たとえば、残業代や有給休暇、退職日について会社が反対したあとも話し合いを続けることです。退職の意思を伝えるだけなら、違法にはなりません。
非弁行為の罰則はどのくらいですか?
弁護士法77条で、2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金と決まっています。業者が報酬をもらって弁護士を紹介する「周旋」も、同じ罰則の対象です。
すでに民間の退職代行に頼んでいて、会社に「非弁だ」と連絡を断られました。どうすればいいですか?
会社が業者との連絡を断ると、退職の話はそこで止まります。ご自身で会社に連絡するか、代理人として会社と話せる弁護士に頼み直すことになります。弁護士に頼むときは、業者と会社のやり取りの画面を保存しておいてください。
まとめ|退職代行の非弁行為は、頼む人ではなく扱う側の問題
非弁行為は、弁護士でない人がお金をもらって法律の問題を扱うことです。罰せられるのは扱う側で、頼んだ人ではありません。
- 非弁行為は、弁護士でない人が報酬目的で法律の問題を扱うこと(弁護士法72条)
- 民間業者は、退職の意思を伝えるまで。会社が反対したあとの交渉はできない
- 報酬目的で弁護士を紹介する「周旋」も違法。2026年に運営会社の元社長が有罪に
- 実態のある労働組合の団体交渉は適法。ただし実態のない組合や提携の形には注意
- 頼んだ人は罰せられない。リスクは、退職の話が途中で止まること
退職代行を頼む人は、もう自分では会社と話せないところまで来ている人です。途中で放り出されて相談に来る方を見るたびに、悔しい思いをします。だからこそ、最後まで付き合ってくれる先を選んでほしいと思います。
違法かどうかを一人で見極めるのは、難しいことです。迷ったら、今の状況をそのまま聞かせてください。

嵩原 安三郎
参考にした法令・資料
- 弁護士法(27条・72条・77条): e-Gov法令検索
- 民法(627条): e-Gov法令検索
- 日本国憲法(28条): e-Gov法令検索
- 労働組合法(6条): e-Gov法令検索
- 最高裁判所 昭和43年12月24日 第三小法廷判決: 裁判所
- 退職代行サービスと弁護士法違反: 東京弁護士会
- 退職代行サービスと弁護士法違反 その2: 東京弁護士会
- 「モームリ」利用者を報酬目的で弁護士に紹介、運営会社元社長に懲役2年・執行猶予3年の判決: 読売新聞オンライン
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共同代表弁護士
嵩原 安三郎
たけはら やすさぶろう
退職・労働問題を中心に、企業と個人の双方における法的問題解決に従事。
退職代行分野において日本有数の実績を持つ。
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嵩原 安三郎
残業代一つとっても、計算は思ったより難しいものです。間違った計算のまま話をまとめられても、頼んだ人は気づけません。正直、怖い話です。弁護士の資格は、その責任を負う人を決めるための仕組みでもあります。