本当のところどうなのという皆様の疑問にお答えしていくブログです。
できればブログ内の動画の方をご覧ください。
2025年6月退職代行業界が大きく変わったことをみなさんご存知でしょうか?
見た目というのは、全く変わりません。
でも、多くの退職代行業者が、自社のサイトから「ある記載」を、こっそり削除しています。
これは、退職代行業者が、ある大きな武器を放棄したことを意味します。
もしこのことを知らないで、退職代行業者に依頼をした場合には、あなたは大変な目に遭うかもしれません。
例えば、勤務先からガンガン連絡があって、家にも来られ、そして依頼した退職代行業者に助けを求めても

私達、交渉できませんから
後は弁護士に依頼して
と言われて、助けられることは一切なくなります。
そして最終的には、会社の人に会社に連れて行かれて、退職の撤回を強要されたり、あるいは会社の人が見守る中で、退職手続きを自分でしないといけない、という事例が増えていくかもしれません。
これは、これまで退職代行業者が

退職100%!
もう会社の人とのやり取りは不要!
と言っていたことが、事実ではなくなるということを意味しています。
今日は、その退職代行業者の大きな変化、そして、これを知らないと大変な目に遭うという、この大きな変化について、みなさんにご説明していきます。
変化に気付いたキッカケ
私がこの変化に気付いたのは、小さな違和感だったんですよ。
これね。
今年の5月とか6月になって、実は

業者に退職代行を断られたので、弁護士に依頼したい
という問い合わせが、急に増えたんですね。
でね、以前も実は、そういう問い合わせってあって。
これ何かって言うと

他の退職代行で断られたので、弁護士に相談したいんです
と。
こんなん、よくあったんですよ。
でも、実はそれ、大きく減ってたんです。
これまであんまり、昔たくさんあったのが、つい最近まで、あまりなかったんですよ。
かなり減ってた。
でもそれが、また急に増えだしたんですよ。
「ん?」と思って。
私、心当たりがあったもんですから、ある大手の退職代行業者のサイトを見てみたんですね。
そうすると、これまで自分たちの強みとして大きく掲載されていた、ある記載が、丸ごと削除されて、別の記載に差し替えられていたんです。
これを見て、私わかりました。
この、ある記載の削除っていうことが、実は退職代行業界の大転換期に来たこと、それを示しているんですね。
業者は使者、弁護士は代理人
退職代行業界の大きな変化を理解するために、まず「業者」と「弁護士」という違い、これを説明する必要があるんです。
まずね、業者というのは使者なんですけれども、これどういうものかと言いますと、1回ぽっきりのメッセンジャーなんですね。
事前に用意していた、伝えたいことを相手に伝えて、それで仕事は終了です。
言わば伝書鳩の役割で、一方的にこちらの用件を伝えるだけで終わりです。
それに対して、相手が反論してきたりとか、何かおかしなことを言ってきても、それに対して再反論するとか、それに説得するということはできない。
だって、メッセンジャーですからね。
伝えるだけですから。
それができないというのが、使者になります。
もちろん、伝えるだけですので

この後のやりとりは私達が窓口になります
ということもできません。
伝えるだけですから。
もちろん、会社がそれに応じて

じゃあ、あなた窓口にするよ
って言ったら、問題ないのかもしれませんけれども。
会社がそれを断って

いや、本人に直接連絡するわ
と言われたら、それをNOと言うことはできないんです。
それに対して、弁護士は少し違います。弁護士は、言わば法的な代理人になります。
あなたの代理人になれるんですね。
これ、使者とどう違うかって言うと、本人、依頼したあなたの分身だったり、エージェントみたいなものだと思ってください。
相手から反論があれば、もちろんそれに、自分で考えて反論するということができますし、相手がおかしなことを言ってきたら、こちらの知識と、これまでの経験をもって、相手に対して説得したりとか、交渉したりすることができるわけです。
その後、相手との窓口、会社との窓口ね。

今後、私に連絡してください
私が窓口になります
ということが可能です。
会社がそれを無視して、本人に連絡しても、本人はそれを完全に無視、拒否することができるんですね。
そしたら会社は

いやいや、本人が無視してるじゃないか
って文句言うかもしれませんけれども、代理人というのを正式に置いているので、「何か用があれば、こちらに伝えればいい」「こちらに伝えなかったことは、本人に無視されても会社は仕方がない」ってことになるわけです。
つまりね、依頼者、あなたが依頼者だとすると、あなたの防波堤になって、相手と交渉する人。
あるいは、端的に言うと、あなたの傭兵と言えるかもしれませんね。
つまり、まとめますと
使者は、あなたの用意した手紙を読む人。
代理人は、あなたの傭兵。
ということになります。
退職代行業界の歴史
僕の記憶ではね、退職代行という言葉を使ったのは、おそらく「EXIT」っていう業者が初めてだったと思います。
2017年頃ですかね。
その頃の退職代行業者っていうのは、自分達が使者である、ということを、すごく意識して業務してたんですね。
もちろんね、中にはこっそり交渉してるっていう業者も、あったと思います。
でもこれ、バレると法律違反ですので。
それはコソコソと言ったら怒られますけれども、あまり人目につかないように、やっていたというのが、この頃です。
ただね、これ、依頼者の立場に立ったら

ただ伝えるだけで、数万円払うって高いよね
って思いますよね。
数万円払ったんだから

代理人になって、窓口になってよ
って思いますよね。
でもそれをね、業者に言われても、
「いやいや、私達、交渉できないんです」「窓口になれないんです」
って伝えるのが真面目な業者なわけですね。
でも、業者としては困るわけですよ。
「なんとか交渉できないかな。弁護士じゃないけど、交渉できないかな」と考える。
そこで、あるアイデアが生まれたんです。
それは、業者が労働組合と提携する、というアイデアだったんですね。
これ、業界にとっては、かなり画期的なアイデアだったんです。
もちろん、これが合法かどうか、ということについては、弁護士の立場としては色々言いたいことありますよ。
でも一旦置いといて。
法的に正式な労働組合を作って、その労働組合が交渉するってこと自体、これは表向きは問題がない、ということになるわけですね。
確か、これ始めたのは「退職代行サラバ」というところだったと思いますけれども、もし違ったらコメント欄で教えてくださいね。
実際、じゃあどういう仕組みでやるか。
色んなパターンがありますけれども、代表的なものを紹介します。
まず、退職代行業者Aが労働組合Bを設立するんですね。
この労働組合Bは、私達と同じだよ、ということは一切言わずに、業者Aはこう言うわけです。

私達、退職代行Aは、労働組合Bと提携しました。
今後は会社と交渉が必要になったら、労働組合Bにバトンタッチしますので。
だから、うちに依頼すれば交渉は可能です!
こういう風に、大々的に宣伝するわけです。
でね、実際に依頼を受けて、会社に電話しますよね。

退職代行Aです
と言って電話する。
そうすると、会社の人が言うわけです。

いやいや、お前な。お前ら民間業者だろ。
交渉できないだろ。何言ってんだ。交渉を拒否する!
会社がそう言う。
そうすると、それに対して

すみません。
私達、労働組合Bです。知らないんですか?
労働組合というのは憲法で認められた権利です。
その労働組合を、あなたの会社は否定するんですか!
労働組合はね、交渉ができますから
そう言うと。
会社の人は、

そうなんだ
これはまずいこと言ったな
ということで、そのまま、うやむやのまま交渉をまとめてしまう。
こういう方法なわけです。
これね、弁護士でない業者が交渉する方法として、爆発的に流行しました。
みなさんもご存知の大手の退職代行業者、それもこの仕組みを使って大きくなっていくわけです。
まさにこれがね、退職代行業界の黄金期と言える時期なんですね。
この時期に、退職代行っていう名前もどんどん広がっていって、多くの人がそれを利用するようになっていくわけですね。
でもね、これに大きなブレーキをかける出来事がありました。
これは、2024年11月、東京弁護士会が行った公式見解なんです。
これ、退職代行業者にとっては、非常に痛い公式見解だったんです。
この見解の名前、「退職代行サービスと弁護士法違反」という公式見解なんですね。
これで何を言ったか。
色んな事言ってるんですけども、明確に言ってるのはね、労働組合と業者が提携して、交渉になったら労働組合にバトンタッチをする、あるいはしたことにする、というこの方法。
これ、違法の可能性が高いですよ、という指摘なんです。
でね、これはね、労働組合と業者が提携して
「交渉になったら労働組合にバトンタッチします」
というこのやり方自体、違法ですよ、と指摘したものなんです。
重要なのはね、この見解を発表したのが、東京弁護士会の「非弁護士取締委員会」。
非弁委員会とよく言うんですけども、そこだったということなんです。
この委員会は、弁護士資格のない者が法律事務を行うという、いわゆる弁護士法違反の違法行為に関する情報を集めて、悪質な場合には刑事告発までする、という担当部署なんですね。
これは退職代行業界に、大きな衝撃を与えました。
ただ、この見解というのが、あまり大きく話題にならなかったものですから、退職代行業者としても様子見が続いたんですね。
そして、2025年6月を迎えるわけです。
この時に、大手の退職代行業者が、労働組合との提携という記載を全面的に削除するわけですね。
これにより、これまで業者が堂々と「交渉できる」と言っていた、退職代行、黄金期の第2期というのが、終わりを告げた、ということになるわけです。
退職代行業界の手のひら返し
でね、みなさん、考えて欲しいんですけど。
労働組合との提携をやめるっていうのは、退職代行業者が交渉できない、交渉しない、という方向に大きく舵を切った事になるわけですよね。
試しにね、みなさん、どこでもいいです。
退職代行業者のLINEに登録して、こう聞いてみてください。

あの、会社が退職させないと言ってきたりとか、有給休暇を使わせないと言ってきたりしたら、交渉してくれますか?
こういう風にLINEで聞いてみると、まともな業者は

うちは交渉できないので、それはもう弁護士に頼んでください

うちは交渉できないんですけども、そこは大丈夫です
そう言うのか、とにかく交渉できないと言ってくると思います。
それ聞いて、みなさん、どう思います?

ああ、そうか。
交渉しなくても大丈夫なんだ
って思いますか?
思い出してください。
第2期の時には、わざわざ労働組合を作って、そこと提携した形をしてまで、「交渉できる」っていう事を、大きな武器として宣伝してきたわけですよ。
ということは、交渉は必要だったわけです。
それを業者は認めてたわけですよ。
それが、この東京弁護士会の公式見解を受けて、突然ですよ。

交渉なんて不要です
って言って、「ああそうか」って納得する人、どれだけいるんでしょうかね。
まさに手の平返し。
これまでは、「交渉できるけども、うちの業者はこういう仕組みでできます」と言っていたのが、180度変わって、「交渉なんて不要です」と言い出したわけです。
そこ、信じられますか。
退職には交渉は不要は本当か
一部の退職代行業者はね、「退職に交渉は不要」って事を大きく言ってます。
確かにね、民法627条1項では、退職意思を伝えて2週間で退職と書いてます。
それを大きく宣伝してるんですね。
これ自体は本当です。
だけど、これを書いている退職代行業者っていうのは、ある重要なことをみなさんに隠してます。
それは何か。
1つ目。退職すると伝えただけでは、退職できない場合があるということ。
2つ目。退職以外の交渉は、自分でしないといけないということです。
退職できない場合
退職意思を伝えて2週間で退職できる、っていうのは、会社の正社員のみです。
ですから例えば、契約期間が決まっている契約社員さんであるとか、業務委託契約をして会社で働いている人とか、あるいは公務員さんとか。
あるいは正社員でも、2週間後ではなくて即日退職をしたい、と希望される方。
こういう場合には、交渉が必要になるんです。
私ね、7年ぐらい退職代行をやってますけども、私達みたいな弁護士、一応、法律の専門家という認識はされてると思うんですよ。
その法律の専門家に対してですらですよ、会社は色々交渉してこようとするわけです。
退職について

これこれおかしいだろう
有給休暇はこうだろう
とかって言って、色んなことで交渉を求めてくるんですよ。
だから、交渉なしですんなり通るっていうのは、どうですかね。
僕は体感的には3割ぐらいかな。
それ以外は、結構交渉してます。
つまり、7割方は交渉してるわけですよ。
でね、その状況で、僕ら電話をする時には、「フォーゲル綜合法律事務所です。弁護士です」と名乗るわけですよ。
それですらそうなんですよ。
そうじゃなくて、例えば会社の立場に立ってくださいよ。
いきなり

なんとか退職代行です
何々さん今日で辞めます
とかかってきて。

そうですか
それなら交渉せずに受け入れます
って思う会社が、どれだけあるでしょうかね。
しかもね、この退職代行業者の名前。
結構、会社にとってはカチンと来るというか、「ちょっとふざけてない?」と感じるものも、少なくないと思いますよ。
使う側はね、利用する際には使いやすいってことになると思うけども、それを受ける会社側にすると、どうイメージ受けるのか。
それをみなさんも想像して欲しいんです。
それで、弁護士と違って、業者の方が交渉は全く要らないってことになる。
ちょっと信じられないです。
交渉はたくさんある
でね、仮に退職日が決まったとしましょう。すんなりね。
ここで業者もメッセージを伝えるだけなので、そういう使者なんでね、もう仕事としては終わりです。
でも、それ以外にも交渉ごとって、いっぱいありますよ。
例えば、離職票とか、源泉徴収票とか、給与明細とか。
本来は会社が送ってこないといけないようなものを、送ってこないとかね。
色んな理屈をつけて送ってこないとか。
それに対して「送ってきてください」とか、「これはこうです」って、交渉は要りますよ。
あとは

腹立つんで給与を払いません
そういう会社もあります。
そういう会社にも交渉します。
有給休暇を拒否する、という会社、少なくないですよ。
あるいは、有給休暇のことを勘違いしてて、有給休暇を使ったらこうなる、ということを全く違う誤解してる会社も、いっぱいあります。
そこにも交渉します。
社宅に住んでいる人、いますよね。
その社宅の立ち退きについてのやりとりなんかも、代理人としてやることもあるし。
社用車を使っている人も、いると思うんです。
その社用車をどういう風に返すのか、鍵をどうするのかということの交渉も、必要になってくることがあります。
業務についての問い合わせがあることもあるんですね。
これ、無視すると損害賠償の対象になっちゃうので、必ずやりとりしないといけないんですけれども、その代理人となれるのは弁護士なわけですよね。
あとは、会社の中には損害賠償請求をするとか、懲戒解雇するんだという無茶を言ってくる会社もある。
それに対して交渉したり、説得したりするっていうのも、弁護士はできますけれども、業者は使者としてはできないですよね。
他にもね、例えば会社に勤めてて、何か資格を取らないといけない。
その資格を取った時の費用、これを

退職するんだったら全額払え
と言ってくる会社であるとか。
あるいは過去に、こんな不正があったとか、こんなパワハラがあったということを、でっち上げて請求してくる会社であるとか。
あるいは、素直に返却物を送ったんだけども、こちらもね、返却物送ったんだけども

届いたけど壊れているよ
これが傷ついているよ
なんていうクレームというか、嫌がらせを言ってくる会社。
そういう会社もありますよ。
それに対する交渉もあります。
これら全てに対して、まともな業者はこう言うわけです。

うち、交渉できないので、ご自分でお願いします
弁護士に依頼してください
そうなったら、どうなります?
業者に払った費用と、弁護士費用、二重払いになりますよ。
そのことを、業者から聞いてます?
まともな業者は、できる範囲をきちんと説明してくれます。
でも、そうじゃない業者は

全部できます
伝えれば大丈夫なんで、会社従うんで大丈夫です
法律的にそうなってるんです
みたいなことを言って。
実際、交渉が必要になると逃げていっちゃいます。
連絡取れなくなるという業者も、たくさんあります。
だから、そんなことをきちっと知識として持っておかないと、お金払って退職代行頼んだんで、もうそれで大丈夫です、ということにはならない。
それが、今の退職代行の現実です。
まとめ
今ね、退職代行というのは大きく変わろうとしています。
まあ、退職代行を使うような人達は、もうどんどん辞めてくれてもいいです、っていう会社がどんどん増えていけば別ですけれども、そうじゃなければ、業者に任せたのでもう退職手続きOKです、という退職代行。
そういう時代は、もう既に終わってしまいました。
ホームページではね、さも全て対応できます、みたいなことを言っておいて、実際何かトラブルが起こると

あと弁護士に
自分でやってください
という業者。
そういう業者に引っかからないようにしてほしい。
まともな業者は、そんなこと言わない。
でね、最近、退職代行業者が「退職に交渉は要りません」と言っているのは、実際は「要らない場合があります」というだけ。
もし交渉が必要になったら、
「自分で交渉するか、弁護士に頼んでください」
っていうことを、言っていないだけ。
そこは、きちっと理解してください。
もしね

退職は会社に連絡するだけで成立します。
交渉も要りません
そう言ってる業者が

即日退職も大丈夫ですよ
とか、「契約社員さん」とか、「業務委託で」とか、「公務員の方」とか、そういう退職も請け負ってますよ、なんて言っていることを見つけたら、ちょっと私達にコメント欄で寄せてください。
その業者っていうのは、真面目にやってる業者。
「ここまでできません」「ここからここまでできます」って言ってる真面目な業者は、そういう真面目な業者の犠牲の上に、お金儲けをしてる業者っていうことになっちゃうから。
法律違反を顧みずね。
だから、そういう業者っていうのは、僕、見つければ弁護士会に通報するし、見つければ場合によっては警察にも刑事告発するかもしれない。
そうじゃないと、真面目にやってるところっていうところが、どんどん潰れていってしまうかもしれない。
それって正義じゃないですよ。
だから、そういう、きちっとした法律を守らない業者がある。
あるいは、きちっと法律を守っていない可能性がある業者があったら、どしどしコメント欄に寄せてください。
まあね、僕らとしては弁護士ですから。
弁護士としてはね、さっき言った範囲、できる範囲が広いから、本当言えば弁護士に頼んで欲しいと思うんだけども。
もし業者に頼むとしても、きちっとどこまでできて、どこまでできないっていう事を説明してくれる、そういう業者を選んで。
あなたが自分で考えて、どこに頼むか。
そこを考えてみてください。
なんでもできます、って言ってる業者。
そこには本当に気をつけないと、あなた自身が大変な目に遭うかもしれません。
それではまた次の動画で、お会いしましょう。
さよなら!
