本当のところどうなのという皆様の疑問にお答えしていくブログです。
できればブログ内の動画の方をご覧ください。
弁護士の嵩原安三郎です。
今日はねみなさんにね面白いというか珍しいというか、面白い裁判例をご紹介しようと思ってます。
これはね、退職した従業員に
損害賠償請求だ
と言って実際に裁判を起こしたその会社がどうなってしまったのか?
というですね、面白い裁判例がありますのでみなさんにご紹介しようと思ってます。
これはね横浜地方裁判所で実際に起こった裁判例です。
これ何かって言うとですね
この会社に勤めている、仮に田中さんとしましょうか
田中さんという従業員さんがいました。
この田中さんね一生懸命働いて、そのせいなのか心を壊して病んでしまうんですね。
それで
もうしんどいです
会社辞めます
という風に退職を申し入れた。
そうすると、社長の方がどう言ったか?
いやいや、お前が言ってるのは嘘や
だから辞めさせないぞ!
と言ったんですね。
田中さんは本当にしんどかったので、もう退職を強行したわけです。
強行といっても、法律に従って退職手続きを淡々と進めたというだけなんですけれども、辞めたんですね。
そうすると会社の社長が怒った。
損害賠償請求だ
って言って、実際に裁判を起こしたんですね。
この金額が驚きなんですけども
1270万円です。
田中さんの年収が250万を切るぐらいだったみたいなので、5倍以上!
つまり5年間、田中さんがタダ働きするようなそれぐらいの損害賠償請求の裁判を起こしてきたわけです。
その内容は…もう驚きですよ。
社長が起こした裁判の内容は?
1つ目
田中の言っている双極性障害っていう心の病なんですけども、
双極性障害は嘘だ!
だから退職はおかしい
ということと
就業規則にはきちっと業務の引き継ぎを行えと書いてあるじゃないか
田中は勝手に辞めて業務引き継ぎもロクにやってない
だから就業規則違反だ
田中が辞めたおかげで損害がたくさん発生してる
その損害なんと1270万円なんだ
田中払え!
という裁判だったんですね。
訴状を受け取った田中さん驚きました。
何だこれ!
と慌てて弁護士に相談に行った。
その弁護士とこの訴状見ながら、弁護士は田中さんから話を聞くわけですね。
いやいやこれおかしいぞ
田中さんが辞めたことによって損害が発生したというのもおかしいけども、この金額はめちゃくちゃじゃないか
何の落ち度もない
むしろ仕事をしてこんなに心が病んでしまったんだから、むしろ会社の落ち度じゃないか
そういうような時に
辞めた田中さんを追い詰めるようなこんな年収の5倍もの損害賠償請求するのはおかしい
反訴だ!
って言ったんですね。
反訴とは?
反訴って何かって言うと、訴訟を起こしてきた相手に反対に訴訟をやり返すというやつです。
これね、交通事故なんかで多いんです。
例えば、バーっと走ってたら横から飛び出してきた車がドンとぶつかった。
いや俺の方が被害者や、お前に損害賠償請求するぞ
いやいや俺の方が被害者や
損害賠償請求の裁判起こしてきたから俺は反訴だ!
というようなそういうような反訴ね。
これはよくあるんですよ。
交通事故なんかでよくあるんですよ。
なんですけど、今回は面白いのはね
損害賠償請求だ!
ということに対して、
この損害賠償請求というのが違法・不当だ
だからこれに対する慰謝料だ!
っていうことで、330万円の慰謝料請求をしたんですね。
正確にはこの30万というのは弁護士費用だってことなんで、300万の慰謝料請求と30万の弁護士費用。
合わせて330万円を請求をしました。
反訴を行った結果は?
さあ訴訟が始まりました。
田中さんの方はね、診断書出したりとかカルテ出したりとか、これまでの色んな経緯とかをまとめた書類を出したりしながら闘っていくわけですね。
それに対して会社は田中さんはこんな風に辞めていった、これは不当だ!って経緯を会社が経緯で書いていく。
それを提出するわけですよ。
で、証人尋問ってのを行う。
田中さんも証人尋問行われたでしょうし、社長も証人尋問ね、正確には本人尋問なんですけど
そういうのが行われて、最後判決になりました。
さあ!その判決どうなったか。
裁判所はね、まず会社からの請求に対しては全面的に会社の敗訴。
会社の負けを認めました。
会社の請求全部棄却です。
おめでとうございます!
で、ここからよ。
田中さんの慰謝料請求は330万円からだいぶ減額しましたけれども
110万円の慰謝料請求。
損害賠償請求を認めて会社に対して
こんなアホな裁判起こしてきた会社よ
田中さんに逆に110万円払え!
という判決をドンと出したわけですよ。さあこの会社アホですね。
はっきり言ってこの1270万の裁判を起こすのに弁護士費用…
まあ100万ぐらいかかってるんじゃないですかね。
そうすると、弁護士費用はパー。
それだけじゃなくて田中さんに110万円払わなあかん。
それだけで数百万の損害が出ているわけですよ。
それだけじゃない。
これ…見てた従業員どう思います?
社長なんか…
損害賠償を田中にするぞと言ってて返り討ちに遭ってるじゃん
なんだこの社長怖くないわ
やめやめ!
こんな社長のところで怖くて我慢して働いてたけどもういらんいらん
退職者どんどん出るんじゃないですかね?
まあ自業自得で、おめでとうございます。
裁判所の判断は?
これね裁判所も厳しいこと言ったよ
まずねこの…
田中さんの傷病についてはもう
診断書とかカルテなんかを細かく分析して、これはホントです
田中さんが言ってるだけじゃないですよ
ってという病状を見ながら判断しました。
この会社が田中さんが急に辞めたから取引いっぱいなくなったわ、田中さんのせいだ!っていうのに対してもね
いや取引なくなったのは田中さんのせいちゃいます
要するに会社のやり方が悪かったってことです
あるいはそんな損害発生してないってことです
もうけちょんけちょんですよ!
さらに、田中さんの請求に対してこの裁判所はこのように言いました。
田中さんの退職は違法でない
それを会社は知ってたでしょ?
会社が主張するような損害が実際に発生してないってことは知ってたでしょ?
にもかかわらず、田中さんの年収の5倍以上の損害賠償を請求するというのは裁判制度の趣旨・目的に照らして著しく相当性を欠く
と言ったんです。
要はね、平たく言えば裁判を悪用すんな!ってことです。裁判っていうのは、憲法にも定められている国民の重要な権利です。
裁判すればねどっちかは負けるわけですよ。
起こした方が負けることもある。
だから、負けるような裁判起こしたらそれが全部不当っていうことは有り得ないです。
色んな事情で負けることもあるわけだから、だから裁判を使うことが違法・不当っていうことは普通裁判所は言わないです。
言っちゃまずいことでしょ。
ところがその裁判所ですら
この裁判はむちゃくちゃや!
と言ったわけですよ。裁判所のね怒りっていうのはね、著しく相当性を欠くっていうこの言い方は、裁判所が相当怒ってる時に使うもの。
だからこれ裁判所は
いやそんなむちゃくちゃな裁判して僕らの仕事を増やすな!
こんな制度を悪用するな!
と言ったわけです。この会社ねまあ結局お金も失いましたし、その後従業員…残った従業員の信用も失ったでしょう。
もちろん、従業員を通じて取引先にもそういう噂は広まりますから、
うわ~、むちゃくちゃな社長や
もう怖いから近寄らんとこ
っていう取引先もいたと思うよ。だからこの社長が失ったのは、お金だけじゃない。
もう一つ重要な信頼というものを失った。
だから、こんなことをするこんな損害賠償を請求するということ自体ね
ほんっっっっっとにアホ
もちろん、この裁判例っていうのは非常に珍しいです。
裁判をやったこと自体が悪だっていう風に反訴が認められることは本当に珍しい。
だけどね簡単にできる仕返しがある。
会社に巨額の請求裁判を起こされた時の仕返しの仕方は?
こういうような特別な巨額のものを請求してきたからというものに対して、そういう時じゃなくてもね何か言ってきた会社に対して仕返しすることができる何か
残業代です。
結構僕たくさん動画作っていますけども、残業代って穴だらけ。
会社が払ってる残業代ってね、会社がきちっと整備してるつもりでも残業代請求できることはよくあるし、そもそもきちっと整備されていない会社が多いから。
だからまあ結構ね退職代行をしてると
いやいや
もう会社辞めるんだからもう時間外手当てまで残業代まで要りません
それで辞められたらそれでいいです
っていう方結構多いんですけども…それはそれでいいんですよ。
いいんですけれども
どうしても悔しい!
こんな会社に色々言われて悔しい
っていう人は、時間外請求、残業代の請求ということを1度考えてみてもいいと思います。そのためには準備が必要。
損害賠償もそうですよ。
何でもかんでも辞めれば損害賠償請求は会社に損害賠償請求はできないわということじゃない。
もちろんね準備と対策をした上で辞めます。
これは僕らに依頼があった方に対しては、きちっとアドバイスをして準備をして辞めてもらうんですけども、でもきちっと準備をしていれば会社からの損害賠償請求って怖くないし、逆に会社に対して
残業代請求だ
と言ってカウンターを食らわしてやることも可能です。
まとめ
従業員に1270万円の損害賠償請求!?社長が裁判所に返り討ちにあった話
・会社が起こした訴訟に対して、弁護士は反訴で反撃。
・裁判所は訴訟内容が『著しく相当性に欠く』と判断し会社の請求をすべて棄却し慰謝料の支払いを命じた。
・巨額の請求をされても反撃はできます。